謳えない鹿 | ナノ



鐘が鳴り渡った所で僕達の授業も終わり、先生に一礼すれば一気に教室内が賑やかになる。
次の授業は何だっけ?と交わされる友達の会話を聞きながら、僕は今晩の夕食はAとBのどちらを選ぼうかと考えた。
そうだ、昨日ジュンコにあげようと思っていたご飯も忘れないで置こう。
たまたま安藤先生の近くを通りかかった僕は、ジュンコのご飯を無償で手に入れる事が出来た。何でも授業に使い終わったそれをどう処分するか考えていたらしい。
僕としてはありがたい。
え?何を貰ったか?
ジュンコが食べるご飯なんて、誰もが想像する。別に言葉にしなくても理解はできる筈だ。

そのジュンコも大人しく僕の首に巻きつき、太陽の光を浴び気持ちよさそうに目を細めている。
今日はのどかだな…なんて思っていると、廊下の方から作兵衛の怒鳴り声が教室内へと伝わって来る。
大方、例の迷子常習犯の2人が脱走したのだろう。
毎日毎日、ご苦労様な事で。

そうだろ?ジュンコ?
と、大切な親友へと視線を向ければ、彼女は乗り出す形で窓の外へとその体を出していた。

「どうしたんだい?」

何か面白いものでもあるのかい?そう思い、自身も窓の外へと少し身を乗り出せば先輩方がゾロゾロと此方の校舎へと歩いてくる姿に目を細めた。

何だ、先輩方か

つい、先ほど校庭の方から変な声が上がっていた様だが、どうやら彼らがその原拠だったみたいだ。

制服が土だらけな所を見ると、組み手の授業だったと見える。
制服の色から見ると、あれは五年生だ。

自意識過剰な今の四年生と比べ今の五年生は結構大人しい方々ばかり。
自重と言うものを知っているからだろう。
四年生の先輩も見習えば良いのに。

すると、今まで微動だにしなかったジュンコがピクリと動いた。
一体何に反応したのだろうか?再び僕は五年生へと視線を向けると、その場には不釣り合いな色に僕は驚いた。


「(六年生?)」


五年生の中に混じる最上級生の制服、一人だけぽつんと目立つそれは靡く薄桜色の髪の毛のせいもあるかも知れない。
だけど、そんな彼の隣で歩く五年生は何食わぬ顔で会話をしている様子。おかしなその組み合わせに僕は自然と興味を引かれる。勿論、僕だけでは無く未だに様子を窺うジュンコも、彼が気になるのだろう。「(今度、見掛けたら声を掛けてみよう)」





ふと、見慣れない彼の足が止まれば、その先には一人の先生が居た。
彼はその五年生の隣から外れるも、その五年生は気付かない様子で他の人と会話して居た。
薄桜色の先輩は先生に呼ばれたのだろう。
何か会話を交わしては、2人で違う校舎へと入っていく姿を僕とジュンコは静かに見送った。
















100422

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