謳えない鹿 | ナノ



「あれ、誰だったんだ?」

「編入生だよ、ああ見えて三年生だってよ」

「あれで三年かよ?!俺自分の身長に自信が持てない」

「おれもだって」


偶々隣をすれ違った下級生の言葉をすれ違い様に耳に拾った彼は怪訝な顔付きへとなる。そして、隣にいる同級生へと視線を向ければ、彼も其れを耳に下らしく同じ顔付きへと成り代わる。編入生この時期にと考えればなんとも珍しい。と考えるも親の転勤などの理由を考えればそれ程騒ぎ立てる問題でもないか?と彼は考えた。
しかし、と思う。
今すれ違ったのは忍たまの四年生である。そんな彼等が驚きながらしかもああ見えて、そして身長と言う単語。
そこから察するに三年生の編入生は四年生の彼等よりも背丈が高いのだと理解できる。三年生や四年生といった頃は成長期でもあり、背が一気に伸びる者も居れば行き成り体付きが良くなったりと何かと忙しい時期でもある。
だが、そんなに背丈が高いのだろうか?
そう思えば思うほどに会ってみたいという好奇心よりも、そんな忍たまに是非悪戯をしてみたいものだと彼は思う。

勿論そんな彼の企てに長年付き添っていた彼はヤレヤレとため息が出る。

「三郎」

「なんだい?雷蔵?」

「分って居るとは思うけど」

「おいおい、私は何も言っていないぞ?」

「顔がにやけているよ?」

「コイツは失礼」

と、おどけた様子で自身へとひらひらと手を振る彼には、自重するといった様子は全く見受けられない。もし、彼が先ほど噂されていた編入生になにかしたちょっかいを出したとすれば、その尻拭いをするのは結局彼、雷蔵がしなければならない。
まだ、編入生が上級生ならば彼が変装をしている又は、下級生の戯れだと留めてくれるかも知れないが話からすれば相手はまだ三年生。そろそろ忍たまとしての自覚を持ち始める時期だろうが、中にはまだまだ幼稚な思考のままだったりとするが・・・

頼むから、できるだけ前者で有ってほしい。

しかし。編入生か・・・

「何処の学園から来た子かな?」

「この学園と仲が良いって言ったら風魔か?」

「でも、今の一年生にも編入生はいるだろう?」

そこで思い出されるのは蛞蝓を酷く可愛がるあの一年生である山村喜三太。もし、その編入生も風魔からの子ならば、僕自身も興味が有ったりするのが本音である。
風魔は実技が多い学園だ。この学園では学べないような話が聞けるかもしれない。
もしかしたら、面白い本を知ってるかも?なんて思っていると、隣からの視線に気がついた僕は、そちらへと視線を向ければ楽しそうに笑う彼が居た。

「なんだい?三郎?」

「分ってはいると思うが」

「僕は君みたいに悪戯はしないよ」

「そいつは本音かい?」

「失礼だな三郎は」

「そいつは悪かったな」


そんな他愛も無い会話を交しながら僕達は自身の長屋へと向った。














100417

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