小説 | ナノ




01

「あ、携帯学校に忘れた」




「…と、言う訳で!真夏のドキドキ☆肝試し大会! 〜夜の小学校〜 はっじまーるよー!!」
「はっじまーるよーじゃねーよ。はじめんなよ。殴るぞ」
「あっれー?三郎ったらもしかして怖いの?ねえ怖いの?」
「うっぜええ!勘右衛門くそうぜえええ!!」
「まあまあ落ちつけよ三郎」


夜の八時四十分。長くなった日もすっかり沈んでしまった時間帯。小学校の門前には、懐中電灯を装備した心底楽しそうな勘右衛門と、乗り気でない三郎、そして宥め役に回った八左ヱ門がいた。
そして騒ぐ五年三人を黙って眺めるなまえ、藤内、左門。三人とも一様に「まだかなー」という顔をしている。


「大体なんでこのメンバー!?みょうじの保護者はどこに行った!」
「兵助は残念ながら風邪っぴきで欠席です。そんな兵助からなまえを頼むと託されたらやるっきゃない!」
「すみません鉢屋先輩。僕が携帯を学校に忘れちゃって…」
「うっ…」
「忘れ物を取りに行って携帯を忘れてくるなんて、なまえはうっかりさんだな!」
「ちなみに忘れ物って?」
「夏休みの宿題です」
「このスペシャルうっかりさんめ!」
「きゃあ」


しょんぼりと肩を落とすなまえを抱きあげ、肩車をして喜ばせる三郎。すっかり休日のお父さんである。
そんな三郎達を横に、八左ヱ門は藤内にこっそり話しかける。


「な、なあ。俺、孫兵に頼まれて来ただけで状況がよく飲み込めないんだけど…」
「はい。なまえが学校に携帯を忘れたことに気付いて、僕となまえで取りに行こうとしたんです。そうしたら途中で左門を拾った尾浜先輩に会い、どうせなら皆で肝試ししようと仰ったのでわざわざ夜まで待ち、今から入ろうとしている所です」
「なるほど。丁寧な説明ありがとう」
「いいえ!」


つまりは勘右衛門の悪ふざけである。昼間に気付いたんだからその時にさっさと取りに行けばいいものを。
珍しく孫兵に頼られたので言われるがままに来たが、ちょっと間違いだったかもしれない。
八左ヱ門は大きく溜息をついた。
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