夢小説 | ナノ




番外編08:日常と友情

授業が終わり、自室に戻り、私は勉強を。三木は火器の手入れをしている途中、タカ丸さんが訪ねてきた。


「ごめんね。実は教えて欲しいところがあるんだけど…」
「それならば忍術学園一のアイドル!田村三木ヱ門にお任せください!」


三木が張り切って立候補したので私はタカ丸さんに座布団を用意するだけでいいか。
タカ丸さんは嬉しそうに座りながら、


「わぁーありが」


スパァン!


「お待ちください!そういうことならば学年一の成績を修めるこの平滝夜叉丸が相応しいでしょう!!」
「な、何ィ!!?」


突如乱入してきた滝によって事態が急速に拗れていく。何故このタイミングで来たし。あと勢いよく開けた戸が壊れていたら許さない絶対にだ。


「この間なまえが読みたいと言っていた本を貸しに来たのだ。それと戸は壊れていない」
「いらっしゃい滝。座布団どうぞ」
「すまない」
「なまえの裏切り者!」


本を貸しに来てくれたのならば仕方ない。座布団を用意すると三木がショック!という顔で何やら叫んだけどよく聞こえませんでした。
机上の勉強道具を仕舞い、喧嘩中の二人の横であわあわしているタカ丸さんを手招き。
そろーりこちらへ寄って来たタカ丸さんを座らせ、躓いている問題を確認。ああ、こういうときはこの術を使うんですよ。
なるほど!と私の机を使って答えをプリントに書き込むタカ丸さんを見つつ、未だ言い合いを続ける滝と三木に視線を戻す。


「大体タカ丸さんは私に教えて欲しいと頼んだんだぞ!お前は引っ込んでろ出しゃばり屋の滝夜叉丸!」
「自惚れ屋の三木ヱ門に言われたくないわ!」
「何だと!?」
「やるか!!?」
「二人とも邪魔」


ドタン、と大きな音がして仲良く床に突っ伏した滝と三木。その後ろで両手を前に突き出している喜八郎。
喜八郎ったら随分思いっきり二人を突き飛ばしたな。容赦ない。


「こら喜八郎!!」
「いきなり何をするんだお前はァ!」
「だって二人とも入口で言い合ってて邪魔だったんだもーん」


スタスタと歩いてきて私の横に座り込んだ喜八郎。チラリとタカ丸さんの手元を覗き込み、「タカ丸さんの宿題も終わったみたいだし」と指さす。
「「何ぃ!!?」」と声を揃えて二人が覗きこんできたのですごく狭い。空間が。完全にキャパオーバーですむさ苦しい。


「二人が無駄な言い争いで時間を浪費している内にタカ丸さんに勉強教えちゃうなんてさすがなまえかっこいい」
「ありがとうなまえくん!これで怒られずに済むよ〜」
「お役に立てて光栄です」
「なまえ!抜け駆けとは卑怯だぞ!」
「私が滝夜叉丸の数千倍分かりやすく教えて差し上げるつもりだったのに!」
「それ、何時間後の話?」
「うっ…」


喜八郎が鋭く突っ込むと、途端に黙りこむ二人。
変な沈黙が部屋を支配する中で、空気を変えようと発言したのはやはりタカ丸さんだった。


「の、喉渇かないっ?僕お茶持ってくるよー!」
「「それならこの私が!」」


ハモった。
滝と三木は本当に仲良しさんだなあ。性懲りもなく言い合いをしていた二人は、お茶淹れ対決をすることで落ち着いたらしい。
公正な審査をするように念押しをして食堂まで走って行った二人を見て、タカ丸さんがヘルプとでも言いたげな視線を寄こしてくる。
えー私が何とかするんですか。面倒だなぁ。
すりすりと肩に額を寄せる喜八郎の長い髪の毛を弄りながら、仕方がないからタカ丸さんに親指を立てた。

まあなんとかなるでしょ。







「さあなまえ!」
「どっちの茶が美味しい!?」
「……………」


ぶっちゃけ二つともそんなに変わらないです。
いや別に、二人の淹れ方が下手なんじゃなくて、逆にきっちり上手に入れてるから差がほぼないというか。美味しいけど。

…よし。
手に持った湯呑を置き、今か今かと結果発表を待つ二人に向かって、


「二人とも美味しいから、引き分け」


すぐさま文句を言おうとする二人の手を取り、自分の頬っぺたに。
顔を少しだけ赤く染めて、照れたような表情を作って。


「二人が、私のことを想って淹れてくれたお茶だもの。順位なんてつけられないよ…」
「うっ」
「いや、しかし…」


目が泳いでいる二人。後一押しだ。


「私が熱いの苦手だから、温度を調節して淹れてくれたんでしょ?」
「ま、まあそのくらい別に手間ではないし…」
「それにこの茶葉、私が好きなお店のだし」
「あ、あんまりなまえが美味しそうに飲むから…」
「ありがとう、二人の気持ちが嬉しい」


とっても美味しかった。だから、引き分け。
……だめ、かな。いいよね?


「……………」
「……………」


顔を真っ赤にして俯き、無言で頷く二人。

封 殺 完 了 。

この二人は意外とこういう友情系の色に弱いのだ。俯いた二人に見えない様にドヤ顔でタカ丸さんを見ると音のない拍手喝采を頂いた。喜八郎からも貰った。ありがとう。
未だに顔の赤い二人を可愛いなあと思いながら、


「ね、鉢屋先輩と竹谷先輩からお菓子を頂いたんだ。みんなで食べよう?」
「じゃあ滝と三木が全員のお茶淹れてね」
「なっ」
「僕も二人の想いがこもった美味しいお茶飲みたいなぁ!」
「お、お任せください!」
「なまえ、お菓子ここ?」
「そこー」


いやあ丸く収まって良かった良かった。
別に嘘じゃないし、みんな幸せだし問題なし。

滝と三木が喧嘩して。
タカ丸さんが間を取り成して。
喜八郎が私に甘えてきて。
みんなでお菓子を食べながらお茶を飲んで。

今日も四年生はみーんな仲良しです。




お菓子は女体化でのパイタッチのお詫び(お礼)として献上されました。
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