夢小説 | ナノ




番外編07:房中術とお相手

「房中…術、ですか」


気まずそうに告げられた実習の内容に、山田先生から渡された手元のプリントに目を落とす。
四年になれば何度かあるらしいそれは、今回はネコ、――つまり突っ込まれる側の実習らしい。


「ああ、本来ならこちらで組み合わせを決めるんだが、」
「私は自分で相手を選んでも良い、と」
「ああ」


恐らく二年前の出来事を配慮してのことだろう。
出来ることならやりたくないが、授業ならば仕方ない。「誰か希望があるか?」と聞かれ、


「土井先生とか?」
「ブフゥッ!!」


山田先生と同室の土井先生をチョイス。土井先生は盛大に噴き出した。ばっちぃ。
「きょ、教師をからかうんじゃない!!」と怒るが、しかしこの土井先生、顔が真っ赤である。


「じゃあ、厚着先生?」
「いやいやいや」
「木下先生とか」
「ちょいと待ちなさいよ」
「…斜堂先生って性欲あるんです?」
「こら、みょうじ。ちょっとそこに座りなさい」
「座ってますが…」
「正座しなさい!」
「正座してますが…」


とりあえず居住まいを正せということだろう。背筋を伸ばして山田先生の言葉を待つ。山田先生は頭が痛いとでも言いたげに押さえているが、だったら保健室に行った方がいいと思う。


「みょうじ。お前はどうしてそう教師ばかり選ぶんだ」
「だって、経験ある方が痛くなさそうじゃないですか」
「……痛く、」
「ええ」


おっと、お二人が何だか気の毒そうな顔をしていらっしゃる。これはあれだ。私の今の台詞からトラウマ的な何かを感じ取ったに違いない。
しかしながら私は未遂事件は幾度も経験していますが、実際にそういった経験は前戯ですらありません。勘違いです。言わないけど。


「……お前の言いたいことは分かったが、私達教師は生徒に手は出せん。申し訳ないが、諦めてくれ」
「……分かりました」


ちぇっ、ダメか。仕方ない。
「よく考えてからまた来なさい。事後報告でも構わん」と部屋を追い出されたので、誰か適当な人がいないかと考えることにした。













さて、誰が良いだろうか。部屋に帰り腰を下ろすと床板を外して喜八郎がひょっこりと出てきた。
たまにあることなので気にせず「おかえり」「ただいま」と短く言葉を交わして、腕を伸ばすといつもと同じく喜八郎が抱きついてきた。ぬくい。


「房中術……」
「そう。誰が良いと思う?」
「私とかどうだ!?」
「無難な線だと、委員会の先輩である食満先輩とか?」
「あれ!?無視されてる!!」


天井から鉢屋先輩が頭だけ出して話に割り込んできたけど、華麗にスルー。
自慢じゃないけどスルースキルは高いよ。鉢屋先輩なんて存在ごとスルー出来るんだから。その後がすごく面倒だからしないけど。


「えぇ…鉢屋先輩ですかぁ?」
「うわっ…何その嫌そうな反応…。さすがに傷つく…」
「だって、鉢屋先輩って……、………」
「だって何!?何なの?どういうイメージ持たれてるの!?」


とても口には出せない。
「じゃあどういう人がいいんだ?」という質問に、ごろごろと猫みたいに擦り寄ってくる喜八郎の前髪を梳きながら、


「えっと、とりあえず…経験が豊富で、慣れている人」
「ほう」
「最後まで優しくしてくれる人」
「うんうん」
「あと短い人?」
「ブフーッ!!」


何で噴き出すの。やめて、ばっちぃ。
咽る先輩をどうしたもんかと見ていたら、喜八郎がくいっと私の袖を引っ張った。


「なまえは短小の方がいいの?」
「うん。だってその方が負担が軽くない?」
「ああ、そういうこと」
「うん、そういうこと」


初めてなので、ソフトに終わらせたいんです。どうせ後何回かやるみたいだし。
今のところ対象外は、七松先輩と食満先輩だけど。


「食満先輩?なんで?」
「天女様の一件があってからちょっと過保護でさぁ。可愛がってくれるのだけど、何か、身の危険を感じるというか…」


そういう状態なので、一線越えるのは躊躇われるのです。
そして七松先輩は論外だ。無理無理。あんまり乱暴にされると潰しちゃう。


「ホントは喜八郎がいいんだけどね。だいすき」
「僕も。じゃあ、ねえ、なまえ? 僕が今からヤりまくって手練れになるから、ちょっと待っててくれる?」
「気持ちは嬉しいけど、喜八郎が自分を大切にしてくれなきゃ、私は嫌だよ」
「なまえ……」
「喜八郎………」


甘い雰囲気を出して見つめ合う私と喜八郎を、ジト目で見つめる鉢屋先輩。
いつもの突っ込みが来ないので、きっとこれはGOサインだろう。よし。


「あむ」
「ふ、ン」
「ばっ……!!」


口と口を軽く合わせると、鉢屋先輩が物凄い勢いで引き剥がした。
喜八郎の唇やわっこい。口に手を当てて頬を赤らめる喜八郎ぐうかわ。それと対照的に目の前の鉢屋先輩の顔、激怖。


「ついに…やりやがったコイツら…!」
「口吸いくらいで大袈裟な。大体先輩ともしたことあるでしょう?」
「あるけど!」
「ハァ?あるんですか?いつ?どこで?何のために?どっちから?どういう状況で?」
「何この子めっちゃ怖い」


喜八郎に詰め寄られる鉢屋先輩を見ながら、どうしたもんかと考え込んだ。















「――その結果、結局私が良いと?」
「ええ。不破先輩も丁度お留守でしょう?」


夜に、鉢屋先輩の部屋を訪ねた。先輩は既に湯あみを終えたらしく、白い夜着だった。私もだけども。
とりあえず入れと言われお邪魔する。鉢屋先輩はなんだかそわそわしていて、私も少しだけ落ち着かない。


「その…、昼間は嫌そうだったじゃないか。どういう風の吹きまわしだ?」
「まあ結局は、鉢屋先輩は私のこと大好きですし。嫌なことしないでしょう?」
「………………」
「勿論、ペラペラ喋ったりもしませんよね?」
「…………ああ、勿論さ」


そっと、顔に手を添えられる。
鉢屋先輩の目は少しだけ熱が籠っていて、


少しだけ、怖い。














「ん、ぅ……ふ…っ」


みょうじを膝の上に乗せ、口吸いをする。ここまではみょうじもしたことがあるらしく、特に戸惑う素振りも見せずに口を開き、舌を絡ませてきた。
だからといって手を抜く気はない。深く、優しく。みょうじが怖がらないように。
お互いに息が上がってきた頃に顔を離すと、みょうじの赤い舌が銀の糸を引いた。
ぺろり、と自分の唇を舐めるみょうじは色っぽい。瞳を潤ませ、そっと私を窺うみょうじは自分がどうすれば良く見えるか熟知しているらしい。さすが十三年間その顔と付き合っているだけのことはある。
少しだけ肌蹴てしまったみょうじ襟元に手を伸ばす。優しく、擽るように肌をなぞる。くすぐったそうな声が甘いものに変わってきた頃、指だけでなく舌も使って愛撫する。
快感に震え、力が入らなくなってきたみょうじをそっと布団に横たえる。帯を解き、膝を割って白い太ももに触れる。そのまま付け根まで指を滑らせ、みょうじ自身を撫で上げると、直接的な愛撫に嬌声が上がった。


「あ、ンっ…せん、ぱ……っ」
「……みょうじ、すごいエロい…」
「ば、っかじゃ、ない、ん…っ、ふぁっ」


可愛くない言葉を吐こうとしたみょうじを、強弱をつけて擦り上げることで封じ込める。
普段あまり感情を揺らさないみょうじが自分の手で乱れているという事実にたまらなく興奮する。いますぐにでも致してしまいたい衝動を何とか理性で抑え込み、みょうじを追いつめる。


「あ、あぁっ、もう…!」
「イきそう?…いいよ、イって」
「あ、あ……や、ああぁっ!」


ビクン、と震え白濁を吐き出す。必死に息を整えようとするみょうじが可愛らしく感じる。
潤滑油を絡め、蕾に指を添えると、みょうじの身体が強張ったのが分かった。安心させようと胸や腹に唇を落とし、指を沈めて行く。


「ン、あ、いた…いっ」
「痛い? 薬使うか?」
「…くすりっを、使わな、と、気持ち良く、出来ないんです、か…っ?」
「……試してみるか?」


両目いっぱいに涙を溜めながらも飛び出す悪態に苦笑しながら、入口を丹念に解す。
しばらくして水音が響くようになり、傷つけないよう細心の注意を払いながら二本、三本と指を増やしていく。


「…挿れても、いいか?」
「待っ、待って、くだ、さ…」
「うん」
「ゆ、ゆっくり、してくださいね…」
「ああ」
「……手、繋いでください…」
「分かった」


みょうじの可愛い我儘を聞いてあげながら、十分に解れたソコに自身を宛がう。
ゆっくりと身体を沈めると、侵入を拒むように締め付けるが、何とか受け入れようとみょうじが深く呼吸をして力を抜こうとしているのが分かった。
焦るな、ゆっくり、と頭の中で繰り返しながら、多くの時間をかけてついに全て飲み込ませた。
はっ、はっと辛そうに息をするみょうじの汗ばんだ額に張りつく前髪を梳いてやると、気持ちよさそうに目を細めた。
動いても大丈夫だと許しを得てから、ゆっくりと腰を動かす。くぐもった声が次第に艶めかしい喘ぎ声に変わっていく。


「あっ、はっ、あぁん、」
「…はっ、なまえ、気持ちいい?」
「あっ、ああっ…、気、持ち、い……っ」
「良かった」


ぐりぐりと奥を刺激すると面白いように跳ねあがる足。特に反応の良い場所を重点的に攻めると、握った左手に力が籠る。
開きっぱなしの口からは絶えず嬌声が漏れ、いつの間にか足が三郎の腰に絡みついていた。


「あっ、せんぱい…っ、はちやせんぱ…っ、も、もう、」
「いいよ、なまえ…、イって……!」
「あっ、あ、あぁぁっ、だめっ、だ、め、ぇええ…!」
「ぐっ…」


一際高い嬌声をあげ、熱をはじけさせたなまえの締め付けに、思わず自分も達してしまいそうになるが、寸での所で抜き取り、なまえの腹の上にぶちまけた。
「ふぁっ…あ……あ…」と焦点の合わない瞳でこちらを見つめるなまえに、「よく頑張ったな」と頭を撫でる。二度、三度と繰り返し気がつくとなまえは瞳を閉じてしまっていた。




















後片付けを終え、さあ自分も横になるかと三郎が布団に腰を落とした時、既に布団で寝息をたてていたなまえがパチリと目を開けた。
起き上がる素振りを見せるので、腰に手を添えて助ける。


「…先輩、どうもありがとうございました」
「いや、別に…痛くなかったか?」
「気持ち良かったです」
「…そ、そうか」


あまりにストレートな物言いに三郎の方がたじろいでしまう。思わず下を向いてしまった三郎になまえは「ただ、」と言葉をつづけた。


「私ばかり気持ちよくなってしまって、先輩に申し訳なく…」
「え? いや、そんな気にしなくても、」


いいんだぞ? と、続けようとした言葉はなまえの手によって遮られた。
視界が反転し、気付いた時にはなまえが三郎に跨っていた。


「みょうじさん!? これは一体どういう…!?」
「ああ、先輩。私は処女ではありましたけど、」
「ひ…っ」


スススーとなまえの指が首筋を辿る。悩ましい動きに三郎は上擦った声を出してしまった。
そんな三郎を愉しそうに見て、


「―――童貞では、ないんですよ?」


良くシてくださったお礼に、たくさん気持ちよくして差し上げますね。
そう言って耳を食んだなまえの声に、ぞくりと身体を震わせた。





このあとメッタメタに喰われます。
後日ばったり会って「きゃぁあああ」と逃げるのは三郎の方。
途中から名前呼びに変わっているのは仕様です。
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