夢小説 | ナノ




25: 帰ってきた兎と狐

「…ここ、は……」


気がつくとなまえと三郎は見覚えのある森の中で座り込んでいた。目の前には折れた大木があり、その断面は黒く焼け焦げていた。
上を見上げると、未だ雲が覆っているが、夜の気配は感じない。早朝といったところか。雷はおろか雨も降っていなかった。


「帰って…きた、のか?」
「そう、みたいだね」


立ち上がりなまえに手を差し出すと躊躇いがちに掴まれる。そのまま引っ張り起こし、肩にかけていた鞄に手を伸ばす。
とりあえず衣を変えなければ。学園のものに会った時に言い訳が立たない。素早く着替え終え、なまえがもたもたと手間取っている間に頭巾を被せてやる。結び終わると同時に着替えも終了した。
今まで着ていた服は鞄に入れ、埋めてしまおうとクナイを取り出すと、なまえが袖を引っ張って止めた。


「燃やす方が、早いよ」


そう言って鞄の底から掌に収まる程の長方形の物を取り出した。ライターと言うらしい。
ライターの小さなボタンを押すとカチリという音と共に炎が宿った。なまえの家はオール電化だったため、はじめて見た手軽に火をおこす道具に三郎はひそかに感動した。
火を衣に付け、炎が安定するとなまえはライターも火の中に放り込んだ。しばらくして、その場には灰だけが残った。


「…なまえ、行こう。学園に帰ろう」
「……うん」


舗装されていない山道は歩きにくい。罠だってある。
よろよろと歩みの遅いなまえに合わせ、ゆっくりと学園の方向に足を進めていった。










「あっ」
「よう勘右衛門。今って演習始まってどのくらいだ?」
「いたああああああ二人とも生きてたああああああああ!!!」
「うるせええええ!!」


学園に向かう道で勘右衛門を発見した。
三郎が気軽に尋ねると、勘右衛門は大声で叫んだ。あまりにも距離が近かったため、なまえはくらりと目を回した。


「だっ、だってお前っ、演習終わって何日経ったと思ってるんだよおぉぉっ!」
「何日経ってるんだ?」
「三日だよ馬鹿ぁぁあああっ!」


三日か。案外時間が経っていなかったな。あちらではひと月以上過ごしたのに。
うわあああと顔から出るものを全て出して泣きわめく勘右衛門をスルーしつつ、空白の三日を埋めるべく頭をフル回転させる。
ちなみになまえはわあわあと泣く勘右衛門にどうして良いか分からずオロオロしている。


「とにかくっ!すぐに学園長先生のところに行くからねっ!もう、ホントに!鉢屋の馬鹿っ!大馬鹿っ!」
「はいはいすみませんでしたぁー」
「誠意が籠ってない!…みょうじもっ!心配したんだからなぁ!」
「えっ、あ、あのっ、ごめ…っ」
「もういいよ!馬鹿!怪我とかない!?」
「なっ、ない!」
「よし!じゃー出発!」
「ほら、行くぞ」


あまりも展開が早すぎて付いていけてないなまえの腕を、三郎が笑いながら引っ張った。
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