夢小説 | ナノ




24: 兎と狐の帰り道

なまえと三郎が平成に飛ばされたのは七月二十日だった。
台風が来てなまえがトリップしたのは八月二十五日。

ちょうど、今日だった。

天気予報では夜から雷雨という予想を見て、なまえは確信した。
三郎との会話もそこそこに、ベッドに座って時間が来るのを待つ。服は万が一失敗した時のことを考えて現代のものを着ている。代わりに三郎が背負っている鞄には、二人分の忍装束が入っている。


「外…すごい雨だな」
「うん…」
「…怖いか?」
「うん、怖い。すごく、怖いよ」
「私がついてる」
「……うん」


不安で泣きそうになっているなまえを三郎が励ます。
強い雨音に混じった、ガタガタとわざと緩めた窓が揺れる音を聞きながら、三郎はなまえの手を強く握った。


「さ、三郎…あのね、」
「うん?」
「僕――……」


ガタンッ

大きな音をたてて窓が開き、風と共に雨が部屋に入ってくる。
大粒の雨は弾丸のようにとは言わないまでも、思わず目を瞑るくらいには強かった。


「離れるなよ!」
「うん…!」


腕に確かな感触を感じながら、三郎はなまえの体を強く引き寄せた。
雨はどんどん二人の体を濡らし、部屋の中のものが暴れ狂う。そして一際大きな雷が近くに落ち、



視界が白に覆い尽くされた。
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