夢小説 | ナノ




23:兎の覚悟

ずっと居場所がありませんでした。
ずっと故郷を恋しく思っていました。

世間知らずと馬鹿にされる度
鈍間と罵られる度

悲しくて苦しくて帰りたくて、泣いていました。



でもそれは、ただ逃げていただけでした。

世界に順応しようとせず
ただ流されて
自ら行動もしないで
帰りたい帰りたいと泣く子供でした。


そんな僕を、必要としてくれる人がいました。
その人は僕なんかのずっと先を行っている人でした。
天才で特別だと思っていた人は、僕と同じ人間でした。

その人は、僕の料理がおいしいと言ってくれました。
僕が側にいると心強いと言ってくれました。
僕はだめなやつじゃないと言ってくれました。


一緒に帰ろう、と言ってくれました。
ずっと、側にいてくれると。


それは魔法のような優しい言葉で
縋りつきたくなるような希望で
彼の負担になると分かっていながらも、僕はその手を取ることを拒めませんでした。




ありがとう、三郎。
今度はもっと、強く。
自分の足で立って、生きていく。
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