夢小説 | ナノ




05:飛び出す兎、蹲る狐

とりあえず、服を着替えよう。
クローゼットから適当にパーカーとジーンズを取り出し、ついでに下着も現代のものに変える。髪はどうしようかと思うが、帽子をかぶり中に入れてしまうことにした。
カバンを取り出して、着替えやすさを重視してジャージを入れる。靴は…クロックスでいいか。
携帯をポケットに突っ込み、時計を確認する。午後八時。自転車の鍵を持って外へ飛び出した。


「鉢屋が行きそうな所…人気のない……暗い所。どこだ…?」


パトカーが走り去るのを見ながら、三郎の居場所を見つけ出そうとなまえは必死に頭を回転させる。もう六年も前の記憶になるはずだが、不思議と記憶は薄れていなかった。
あそこと、そこと……。メールの目撃情報を頼りに候補をあげる。該当箇所が多すぎるが、ひとつひとつ地道に探していくしかないだろう。自転車のペダルを漕ぐ足に力を入れた。














耳につんざく音を出す鉄の塊が来たと思ったら、物々しい格好をした男が二人、近寄って来た。警戒して構えるが、何かを出せ、見せろと言っている。言葉が通じることに少しばかり安心したが、出せという以上物盗りに違いない。クナイを取り出すと男共は身構えた。

やはり、物盗り。もしくは盗賊か。
隙をついて逃げ出したのは良いが、どこに逃げればいいのかも分からない。
しかもあの鉄の塊に乗って三郎を追ってくるのだ。最初は一つだったあれが、時間を経るごとに増えて行くのが怖くてたまらない。
やっと一息ついたのは、薄汚い、建物と建物の隙間だった。入れ物のようなものが置いてあり、食べ物が腐ったような臭いがする。

ここは、どこだ。私は実習中で、裏裏山にいたはずだ。こんな場所知らない。
級友たちの顔を思い出す。心細くて、ずるずると座り込む。
誰か、助けてくれ。誰でもいい。誰か、誰か ―――――…・


「―――鉢屋ッ!?」


どれくらいそうしていただろうか。
気がつくと寝てしまっていたらしい。そんな三郎を起こしたのは、


「……みょうじ…?」


周囲と同じような服に身を包み、息を切らしたみょうじだった。
[] | [] | []