夢小説 | ナノ




03:兎と狐と雷と

「……………」
「あ、あの、ごめん、けど、よろしく…」
「………………………ああ」


冗談じゃない。
冗談じゃないが、やるしかない。

グループを作って行う実習で、みょうじが弾かれてしまい私と組まされることは今までにも何度かあった。
ただ、今回は二人組だというだけで。
割と成績に響く重要な実習だというだけで。


「あーもう!どうして私がこんな目に遭わなきゃいけないんだ!」
「三郎ったら、そんなにカッカしたらみょうじが可哀相じゃないか。もっと優しくしておやりよ」
「そうはいってもだな、雷蔵。ことあるごとにみょうじの面倒を見させられる私の身にもなってくれよ」
「でも悪い奴じゃないだろ」
「悪くないからって何でも許される訳じゃないだろ」


雷蔵の助言はやんわりと否定して、ハチのフォローを一刀両断する。
そういうのは所詮、他人事だから言えることだ。


「というか、そこまで庇うんならハチ、お前がみょうじと組めよ」
「い、いやぁ俺は今回頑張んないと色々ヤバくてさー」
「ほらみろ。自分が出来ないことを人に押し付けるんじゃない」


全く。どうして私がこんなことしなくてはならないのか。











「待っ、待って、は、はちや…」
「うるさい。さっさと来い!」


予想はしていたが、みょうじはお荷物以外の何物でもなかった。
足は遅いわ転ぶわ。今まで罠にかからなかったのはただの偶然だろう。
込み上げてくる苛立ちを溜息に変えて吐き出す。最悪の状況はこれだけでなく、雨まで降り出した。雨足は強い。
時折空が光り、ゴロゴロと腹に響くような音もする。これは、雷も鳴り始めそうだ。
雷は、危ない。ここは森で、背の高い木がたくさんある。自身に落ちることも容易に想像できた。だから、早急に避難できる場所を確保しなければならなかった。
それをみょうじは理解しているのだろうか。


「は、はちや、そっちはダメだよ…雷、落ちるから…」
「は?何言っ」





ピカッ






視界が眩むくらいの光が、身体を覆う。
意識が途切れる寸前、見えたのは必死にこちらに手を伸ばすみょうじだった。
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