夢小説 | ナノ




16:焦りと目論見

何よ何よ何なのよ!
愛美は焦っていた。最近、自分の周りにいる男共の数が少しずつ減っていることに今更気付いたのだ。

どうして?
声をかけても愛想笑いしてすぐどっかに行っちゃう!今まではあっちから鬱陶しいくらい話かけて来たのに!
しかもだ。圧倒的に主要キャラが減った。最初は留三郎と伊作。次に八左ヱ門。三木エ門に滝夜叉丸。雷蔵に文次郎。兵助まで!
残ってるのは小平太だけ。暴君と呼ばれる小平太がこちらにいることに幾ばくかの安心を得るが、それも時間の問題かもしれない。

あいつ…!
絶対あの女が何かしたのよ!じゃないとこうなるはずないわ!!
顔をしかめて爪を噛む。
これは早急になんとかしなくてはならない。
このままでは、愛美が始末されてしまうかもしれない。そんなのは絶対に嫌だ。じゃあ、どうすればいい?

みょうじなまえが嫌われれば良い。愛美の代わりにアイツに何か罪を擦り付けて。そうしたらきっとみんな、愛美の元に帰って来てくれる。
しかし、これは慎重に事を進めなければならない。
だって、よくあるパターンだ。罪を擦り付けようとして、失敗して。さよならバイバイ。
もしくは逆に冤罪を着せられてバッドエンド。
そう、よくあるパターンだから。だから、自分ではやらない。モブにもやらせない。だってモブは、メインキャラクターには敵わないから。

だから、そう。
メインキャラクターにさせれば、きっと大丈夫!
愛美の元に未だ残っているメインキャラクターは七松小平太ただ一人。彼はこういった小細工は苦手そうなイメージがあるが、しかし逆にそれは疑われにくいという利点がある。
それに小平太なら、何とか出来そうな気がする。だって暴君だし!

ふふふ、と愛美は哂う。
見てなさいよみょうじなまえ。もう勝った気でいるんでしょうけど、残念でした。愛美の勝ちよ。私はよくいる夢小説の天女とは違うんだから!



「小平太!お願いがあるの…」
「お願い?なんだ?」
「実はね、………」





彼女が馬鹿にしている「天女様」にすら劣るという事実に、園原愛美はまだ気付かない。
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