夢小説 | ナノ




10:不審と不信

「……改めてみると違和感バリバリだよな…」


朝食時。昨日まではいなかったハチが俺達と同じテーブルについている。
何でも天女様がみょうじに仕事を押し付けた挙句、汚い言葉で罵っているところを目撃したとか。
みょうじは清純そうな顔をして強かで腹黒いから、わざとかなー?って思ったけど、「飛んで火に入る夏の虫でした。生物委員会委員長代理だけに」とか言ってたから、多分偶然だろう。
茫然とした顔で天女様に群がる上級生たちを見るハチに三郎がからかいの言葉を掛ける。


「よく言うよ。昨日まではお前もあそこにいただろうに」
「うっ……」
「まあまあ鉢屋くん、そんな意地悪言わないで…」
「気持ち悪いんでニヤニヤしないでくださーい」
「雷蔵の顔のどこが気持ち悪いんだ綾部!」
「不破先輩はそんな顔しませんよ」
「まあまあ」


にぎやかでいいねー。この調子で兵助と雷蔵もこっちに戻ってきてくれないかなー。
ごちそうさまでした、と手を合わせて膳を返却する。
あー今日は一日座学の日なんだよなー。眠くなっちゃう。
なんて考えながら食堂を出てから、何か違和感。んん?何か足りない気がする。何だろう?


「あれ?なまえくん、今日は三木エ門くんに声かけないの?」


ああ、それだ。
いつもは食堂から出る前に田村(と、自動的についてくる平)を呼び寄せてから教室に行くみょうじが、今日はそれをしていなかったんだ。
はー違和感の正体が分かってスッキリ。スッキリした所で、今度はその理由が気になる。鉢屋と綾部もそうみたいで、じっとみょうじの方を見ていた。
当のみょうじは「あー…」と何を考えているのかよく分からない表情で、


「だってー。止めろって言われたんですもん」
「え、誰に?」
「天女様」
「は?」


天女様がみょうじに止めろって言ったの?なんで?
とりあえず訳を聞きたいよね。だから三郎と綾部、ちょっと落ち着こう?みょうじが心配なのは分かったからホラ。


「『私は常に男に囲まれていたいから邪魔をするな』」
「え?」
「要約すると、そのようなことを言われました」
「何それ聞いてない!」
「私も聞いてないぞ!いつ!どこでの話だ!」
「えーっと鉢屋先輩が天女様消えろと駄々を捏ねていた日なので…」
「そんなに前!?」
「でも習慣なのでスルーしていたら校舎裏に呼び出しくらって」
「どこの不良!?」
「改めて念押しされたので、まあ」
「なまえ、何で言ってくれなかったの?」


うるうると大きな瞳に涙を滲ませながら綾部がみょうじに泣きつく。どうせ嘘泣きだ。
みょうじもそれを分かっているだろうにヨシヨシと撫でてあげている。面倒見がいいというかノリがいいというか。


「言うの忘れてたの。ゴメンネ」
「忘れてたなら仕方ない。次から気をつけて」
「分かった」
「仕方ないの!?」
「綾部の基準が分からん!」


鉢屋だけじゃなくてタカ丸さんもツッコミに回ったかー。
この二人は本当に自由だなー。ねー、ハチもそう思うでしょ?


「まあ…俺も散々みょうじに振り回されたしな…」
「聞いたよハチ。お前みょうじの色に引っかかって…」
「わーー!それはもう忘れてくれ勘右衛門!」


慌てて口を塞ぎに来るハチはやっぱり面白い。うんうん、ハチがいないとツッコミが鉢屋だけで大変だもんね。戻ってきてくれてよかった。
この前は食堂でみょうじを睨んでたっていうし、どうして天女様はみょうじが気に食わないんだろ。変なの。


















「おいなまえ!どうして何も言わずに先に行ったんだ!おかげで授業に遅刻するところだった!」


始業寸前に滑り込みセーフをかましてきた三木が休み時間になった瞬間にガッシリと袖口を掴んで文句を言ってきた。
わき目も振らず忍たまの友を読んでたからてっきり気にしてないと思ってたのに。この真面目さんめ。


「そうだぞなまえ!田村のアホはともかく、どうして私にまで声をかけない!?」


廊下側の窓がガラッと開いて顔をのぞかせたのは平さん家の滝夜叉丸くんでした。
うわー滝も来ちゃった。これは絶対めんどくさくなるパターンだ。廊下側の席であることが悔やまれる。


「っていうか、三木も滝ももう四年生なんだから、私に頼ってないで自分で時間を見て来なよ」
「「うっ…」」


善意で声をかけてあげてたんだゾ。それをやめたからって文句言われるなんて不条理許さないよ。


「確かにその通りだが…」
「だが昨日までは声をかけてくれていたじゃないか!どうして急に…」
「天女様に止めろって言われたからー」


もごもごと決まり悪そうに私を窺う滝三木はとっても可愛いと思う。
ので、ついバラしちゃいました。まあ、口止めはされてないし、いいよね?うん。


「天女様に…?」
「何で……?」
「なんかー。私に二人をとられるのが嫌なんだって。前に二人が言ってた通り。嫉妬?ってやつなんじゃない?」


ヨカッタネ。
そう言うと二人は何故か微妙そうな顔をしていたけれど。
私には何が何やら分かりませーん。



夢主が四年を取り戻しにかかりました。
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