夢小説 | ナノ




07:NOとはっきり言うことが出来る

「おお、お前が例の天女か!私の後輩が二人もお世話になったようだな!」
「はいはい、私が例の天女のみょうじなまえですよ六年生君」
「七松小平太だ天女様!私の後輩をよくも誑かしてくれたな!許さん!」
「誑かしたつもりはないのですが六年生君。この美貌に惹かれたというのならば仕方のないこと。持って生まれた個性なので受け入れてください」
「七松小平太だ天女様!」
「みょうじなまえです六年生君」
「……みょうじ、さん」
「なんでしょう七松君」


四年の滝夜叉丸に三年の三之助は最近天女と会ったらしい。
特に魅了されたような様子はないように思えるが、なんと今回の天女様は無害だと言うのだ。
そんなはずはない。天女という存在は、いつだって忍術学園にとって有害で無駄で無益で邪魔者だ。どんなに心を強く持っても天女のターゲットにされれば思考が働かず、思わぬ事を口走り望まぬ暴力をふるってしまう。そんな天女が、今回に限って無害であるはずなど、絶対にないのだ。
そう意気込んで天女の前に姿を現した小平太は、天女の姿を見ても自己を保っていることを確信し、今回のターゲットではないことを喜んだ。
今までの分をきっちりと償わせてやる。
意気揚々と喧嘩を吹っ掛けた小平太は、しかし想像とは違う反応が返ってきて肩透かしをくらった気分になった。


「……ううむ、なんかあれだな、お前は今までの天女様とはちょっと様子が違うな?」
「今までの天女様のことを存じ上げないので私に聞かれても困りますね」
「お前は私たち上級生にちっとも声をかけに来ないし、下級生に雑用を押し付けたりしない」
「厄介者の自覚はありますので無駄に声をかけるのは控えていますよ。時間が余って仕方がないので雑用は申し付けて欲しいくらいですねぇ」
「物を強請ることもなければ人を傷つけてはならない等と綺麗ごとを並べて皆を惑わすこともしない」
「衣食住は事足りていますので、特に欲しいものはありません。本職の忍を目指す相手にその言葉は侮辱なのでは?」
「…男たちにチヤホヤされたいとか、誰かに守って欲しいとかそういうのは…」


これほど直球な言葉はどうかと自分でも思ったが、聞かずにはいられなかった。
しかし天女は小平太の言葉に理解不能、という表情を浮かべてこう言い放った。


「私ほどの美人になるとチヤホヤされすぎて放っておいて欲しい位です。ある程度は自衛できるのでこの学園内にいる限り護衛は必要ないかと」


自信満々に告げたその内容を頭の中で反芻する。
確かにこんなに美人なら掃いて捨てる程の男が寄ってきても不思議ではない。
実際に山賊を全滅させた実力を持つ彼女に学園内で危険が及ぶこともないので誰かに守ってもらう必要もない。
そうか。
この天女は、私達に特別興味はなく。肉体的にも精神的にも「男」を必要としていない。
そうか。


「そう、か…」
「ええ」
「……そうか!今まで失礼な態度を取ってすまなかった!お詫びに私と一緒にバレーをしよう!」
「いいえ私、今から食堂のおばちゃんのお手伝いがありますから」
「少しくらいいいじゃないか!バレーしよう!」
「また今度」
「今しよう!」
「また今度」


強引に引っ張って行こうとした小平太の手は空を切り、胸の前でバッテンを作る彼女に小平太は思い切り不満な顔を晒すことになった。
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