夢小説 | ナノ




04:男は漁るものではなく掃いて捨てるもの

学園にまた天女がやってきた。
退治しても何度も何度もやってくる天女という存在に私はイライラが募っていた。
夜、鍛錬から自室への帰り道にたまたま天女の姿を見かけた。
どうやら風呂の帰り道のようだが、その整った容姿を見て舌を鳴らす。全く忌々しい。


「おい、そこの天女」
「はい?なんでしょう。五年生君」
「…私はお前を認めないからな。どうやって乱きりしんを丸め込んだか知らないが、この学園に天女なんて異物は必要ない。さっさとここから出ていけ」
「まあ、そうですか。可能かどうかは分かりませんが、出来るだけ早く帰れるように頑張りますね」
「えっ」
「えっ?」


ビシッと指をさして敵対宣言をする。
わざとらしく涙を流すか、傷つきましたというアピールをするか。そういう反応を想像していたというのに、返ってきたのは了承の言葉で少し戸惑ってしまう。


「……フン、そんな殊勝なことを言ってどうせ後で上級生にいじめられただなんて言って泣きつくに決まっている。今までの天女は皆そうだった。お前もそうなんだろう!?」
「まあ、今まで大変だったんですね。お疲れ様です。私は今現在、あなた以外に上級生の知り合いはいませんので泣きつく相手がいません。ご安心を」
「これから男漁りしに行って泣きつくんだろう!?」
「どうして私が男漁りをしなくてはいけないのです?」
「は?」

「私ほどの美人になると寄ってくる男なんて8割が私の体目当てです。せっかく面倒な輩から解放されたというのに自分からわざわざ面倒ごとに飛び込む趣味はありません」

「…………」
「…………」
「……の、残りの2割は…?」
「私の家は裕福なので、財産目当てです」
「…………………今まで苦労してきたんだな…」


あまりにも堂々と言い放った言葉に嘘や偽りは感じられず、その事実がより一層不憫さを誘った。こいつ、くのたまの方で保護してやった方が良いのでは?
労いを込めて思わず肩を叩くと、天女は自分で言っていて虚しくなったのか少しだけ疲れた表情で息を吐いた。
[] | [] | []