夢小説 | ナノ




03:天女と間違えるのも無理はない

「天女様、さっきはありがとうございました!夕飯をお持ちしました!」
「天女様、忍術学園に住むことになったんですよね?」
「天女様、何か困ったことがあれば相談してくださいね!」


天女様の部屋に夕飯を持っていく!
そう言いだした三人に付きそう形で天女様との初邂逅は現実となった。
五人分の夕飯を持って天女様にあてがわれた部屋へと向かい、外から声をかけるとすんなりと入室の許可が下った。


「あら、さっきの三人組ね。私をここに連れてきてくれてありがとう。夕飯まで持ってきてくれるなんて至れり尽くせりね。…あら、そちらの方は?」
「あ、すみません」
「この人は土井先生です!」
「僕たちの担任の先生です!」


戸を引いた天女様は毎回天女様へと回される着物を難なく着付けていた。
今までの天女様は全員着物なんて着れない!と喚いていたが、そういえばお茶を習っているのだったか。
それにしても、なるほど今度の天女様はそれはそれは美しい顔をしていた。
艶のある長い髪、大きな瞳、形の良い唇。体型もスラっとした細身ではあるが、出るべきところは出ている。若い山本シナ先生に負けず劣らずの魅力的な体だ。
そんなことを考えていると悟らせぬ人好きのする笑顔を浮かべ、半助は丁寧に自己紹介をする。


「申し遅れました天女様。私は土井半助。この学園で教師をしています」
「これはご丁寧に。土井さんですね。私の名前はみょうじなまえです。どうしても呼びたいのなら天女と呼んでも構いませんが、普通に名前で呼んでいただけると嬉しいです」
「えっ、天女様とお呼びしなくても良いのですか…?」
「ええ、まあ。私は天女ではありませんし」
「えっ!!?」
「お姉さん天女様じゃないんですか?!」
「私は天に仕えていたわけでも天から舞い降りたわけでもありませんし、羽衣もありません。未来からきた一般人ですので、敬う必要もありません」


今までの天女様は「天女様」と呼ぶと口では否定しながらも嬉しそうな様子を隠し切れなかったが、今回の天女様はそうではないようだった。
ただただ驚いて見ているとその視線に何か勘違いしたのか、天女様はフッと笑い、


「まあ、私ほどの美人は滅多にいませんので天女と間違えるのも無理はありません。どうしてもと仰るなら天女呼びでも構いません」


ドーンと胸を張ってそう言い放った。
沈黙が部屋を支配した。


「………みょうじさん、と呼ばせて頂きますね」
「ええ、ぜひ」
「僕たちはなまえさんって呼んでもいいですか?」
「もちろんですよ」
「わーい!」


何事もなかったかのように三人と会話を進める彼女を見て、もしや今のは天女様ジョークだったのか?と頭を悩ませる半助だった。

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