夢小説 | ナノ
09:思い出に縋る
園原さんと久々知君、付き合ってるんだって。
え、ウソ?
久々知君ってみょうじさんと別れちゃったの?
だって最近ずっと一緒じゃん。
てっきり破局したんだと思ってたけど違うの?
でもさー
園 原 さ ん の 方 が
お 似 合 い だ よ ね
「兵助はなまえと園原、どっちが好きなわけ?」
放課後。
なまえが次のコンクールのことで先生に呼ばれている間に、俺は兵助を呼び出した。
最近の二人の行動は目に余る。どうしてなまえをもっと大事にしてやれないの。お前、あんなに嘆き悲しんでいたじゃないか。
怒りと、焦りがごちゃ混ぜになって、感情のコントロールがひどくむずかしい。
俺と対峙している兵助は、ムッとしたような表情で、
「勘ちゃんには関係ないだろ」
「はあ!? あるよ!だって俺たち、」
「付き合ってるから、って?」
「は、」
予想外の言葉に思考が停止してしまった。くそ、こんな言葉で固まるなんて。よっぽど動揺しているみたいだ。
落ち着け、今兵助は何て言った?
「付き合ってる? 俺となまえが? おい兵助、何の冗談だよ。笑えないんだけど」
「冗談? 真実だろ。ずっと前から感じてはいたんだ、違和感。勘右衛門は何かあるとなまえ、なまえってなまえばかり優先する。なまえのことを第一に考えて、なまえが少しも傷つかないように守ってる。これがただの友人だって言って信じられるかよ!」
「友人だよ…!とっても大切な、」
今度こそ、守ってあげなきゃいけないのに。
もうあんな不幸な出来事は忘れさせてあげたいのに。
「何でなまえを傷つけるようなことするんだよ…!お前、死ぬほど後悔してたじゃないかッ!」
「はぁ?…何の話?」
「〜〜〜〜〜っ」
どうして俺には記憶があって兵助にはないの。もどかしくて堪らない。
唇を噛む俺に、兵助は言った。
「とにかくこれは俺となまえの問題だから。付き合ってないって言うんなら尚更。もう放っておいてくれ」
俺は、そう言い残して去った兵助の後ろ姿を、ただただ見つめることしかできなかった。
思い出に縋る
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