夢小説 | ナノ




07:失楽園

一組に転入してきた園田さんって子すごい美人だよねー
ねー、でも今まで彼氏とかいたことないんだって
うっそー!あーでも、逆に美人過ぎて男子ビビっちゃうんじゃないの?
なにそれー(笑)
あはは、うふふ




「園田さん、人気者だね、勘ちゃん」
「…そうだね」


転入してきた園田愛美はその外見と取っつきやすい性格でたちまち一組の人気者になった。その馴染みようは、忍術学園での出来事を彷彿とさせる。
彼女はどう見てもあの時の天女だが、忍術学園での記憶はないようだった。

ちらりとなまえの表情を盗み見る。
俺と話しているなまえは、穏やかな顔をしている。ように、見える。
でも本心では気が気でないだろうと、思う。
あの時の悲劇が、もうしかしたらまた繰り返されるんじゃないかって。どうしてもそう思ってしまう。


「久々知君、今日臨時委員会をするって先生が言ってたの。一緒に委員会行こう?」
「そうなのか。分かった、ちょっと待っててくれ」


ちょうど新学期に転入した園田は、兵助と同じ委員会に入った。
教室に入ってきた兵助を捕まえてどうやら一緒に委員会に行く話をしたらしい。
返事をした兵助は園田をその場で待たせ、申し訳なさそうな顔をしてこっちに歩いてきた。


「ごめんなまえ、委員会が入っちゃった。約束していたのに、本当にごめん」
「気にしないで兵助。委員会なら仕方ないよ、また今度行こうね」
「ごめん、ありがとう。遅くなるかもしれないから先に帰ってて」
「私、一緒に帰りたいな。待ってちゃだめ?」
「嬉しいけど、だめ。暗くなると危ないだろ」
「…兵助と一緒なら危なくないもん」
「…なまえは俺のこと過大評価しすぎだよ。俺は格闘技とかやってないし、明るい内に帰って欲しい」
「……うん、分かった」
「約束だよ」


なまえの返事に満足した兵助は、「勘ちゃん、なまえのこと頼むよ」と俺に声をかけてから園田の元に向かった。主に園田から話しかけて兵助が返事をしている形ではあるが、二人で歩く姿はそれなりに楽しそうに見えた。


「…勘ちゃん、私、部活やって帰るから先に帰ってて」
「…さっき兵助と早く帰るって約束してなかったっけ?」
「すぐに帰るとは言ってないよ?」
「それもそうだ」


悪戯っ子みたいな表情のなまえにニンマリ笑い返して、なまえの荷物を持つ。なまえを置いて帰る気なんてさらさらない。どこまでもお付き合い致しますとも。
俺の考えが分かったのか、なまえは「いいって言ってるのに」と苦笑しながら俺の隣に並んだ。


「何描くの?」
「うーん、何にしようかな」


思案しているなまえは楽しそうに見えたのに。
数日後、描き上がったなまえの作品名は、『追放』だった。




失楽園
[][][]