夢小説 | ナノ




05:愛おしい時間

「「「「「なまえ、コンクール優秀賞おめでとう!!」」」」」


小気味よい音とともにクラッカーが破裂する。祝われたなまえは照れくさそうに笑いながらお礼を言った。


「さー食べて食べて!今日はなまえのために美味しいものいーっぱい準備したからね!」
「私がな!!」
「まあまあ三郎、あんなに一生懸命準備してたから手柄を横取りされて怒るのも分かるけどそんなにカッカしないで」
「べっ、別に一生懸命になんか」
「男のツンデレなんてキモいだけなのだ」
「へーいーすーけー!言い過ぎだぞ」
「……俺だって頑張って美味しいお豆腐作ってきたのに…」
「兵助お豆腐作ってきてくれたの?嬉しいな、見せて」
「う、うん!」
「現金な奴だな…」


あれから無事みんな同じ高校に合格して、俺の紹介で再び六人で行動することになった。
なまえは美術部に入った。
中学でもそうだったらしい。昔から絵の才能はあった。乱太郎とは違い人物画だけは苦手にしていたけど。
初出品の作品が優秀賞をとったと聞いて、お祝いしない手はない。二人暮らしをしている三郎と雷蔵の部屋で盛大に祝うつもりだ。


「なまえ、楽しんでる?」
「勘ちゃん」


台所に飲み物を取りに行ったなまえを追いかけて聞いてみた。リビングでは兵助 vs 三郎の死闘が繰り広げられ、ハチと雷蔵が止めに入っている。
そんな騒がしいBGMを嬉しそうに聞きながら、なまえはうんと頷いた。


「ありがとう、勘ちゃん」
「な、なに急に…」
「勘ちゃんがあの時私に話しかけてくれなかったら、今のこの時間はなかったと思うから」
「そんな大げさな…」
「大げさじゃないよ。勘ちゃんの紹介がなかったらグループに入るどころか話しかけることすら無理だよ。特に三郎が」
「あいつ鉄壁の女嫌いだからなー。でもなまえ、あっという間に皆と仲良くなったじゃん」
「びっくりするくらいにね。…昔の記憶が、なんとく残ってるのかな」


昔の、忍術学園にいた頃の記憶が残っているのは俺となまえだけ。
それでも排他的な俺たちの輪の中にすっぽりと収まったなまえは、記憶がなくとも大事な、今度こそ大切にするべきな仲間だと心が理解しているんじゃないか。
少しポエムっぽいけど、俺はそう思っている。


「そうなると残る心配事は一つだね」
「心配事?何かあったっけ?」
「なーにを仰いますか。兵助とのことに決まってるでしょ」
「なっ」


面白いくらい顔を真っ赤にさせたなまえが視線を右往左往させながら、


「そ、そん、別に昔そうだったからって今世でも恋人にならなきゃいけないなんて決まりないし、」
「兵助、多分今世でもなまえのこと好きだよ」
「本当にッ!?」
「間違いなーい!見てれば分かるよ」
「さ、さすが学級委員長の勘ちゃん。鋭い観察眼は今も健在か…!」


まあ兵助から恋愛相談されただけなんだけどね。

前世の兵助は、それはもう酷い有り様だった。探しても探してもなまえが見つからず、「俺が、消えろって言ったから…っ」と自分をずっと責めていた。酷い言葉を吐いたこと、信じてあげられなかったこと。責めて責めて責めぬいていたから。
今世では、二人は幸せになって欲しい。


「が、頑張ってみようかなって言ったら…現金な奴だって笑う?」
「笑わないよー!俺はいつだってなまえの味方だもーん」


少しブラックなジョークをおちゃらけてそう言うと、なまえはクスクス笑ってくれる。「えー本当にー?」と言うもんだから、俺は更に調子に乗って、


「本当だよー?よし、じゃあ勘ちゃんが恋愛必殺テクを教えてあげましょう。まずは出来るだけ話を聞いてあげること。豆腐をほめること。そして最後になまえのその隠れナイスバディで誘惑して…」
「隠れナイスバディって…何でそんなこと知ってるの。勘ちゃんの変態。エッチ。セクハラ魔」

「セクハラがなんだって?」


ツン、と痛いくらい張りつめた空気が真後ろから流れてきて俺は硬直した。
これは、昔よく感じていた殺意ってやつじゃないでしょうか。


「兵助、勘ちゃんがセクハラするー」
「ばっ、なまえ、」
「勘 ち ゃ ん ?」
「は、はい!」
「ちょっとこっちに来て…?」
「よ、喜んで…」


なまえちゃぁぁん!
酷い裏切りをみた。恨みがましくなまえを見ると、少しだけ申し訳無さそうな、そして楽しそうな顔をしていて。
こんなの、許すしかないじゃんか、もう!




愛おしい時間
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