夢小説 | ナノ




七松先輩を全力でフォローする後輩

俺の父親は大工をしていて、力仕事のせいか乱暴というか、大雑把というか。幼い俺を文字通りぶんぶん振り回して遊び相手になっていたそうだ。
だから忍術学園に入ってすぐ上の七松先輩が力一杯後輩の俺を可愛がったところで「あははは七松先輩ったらあははは」と大して気にしていなかった。
だが他の後輩はそうではなかったようで、翌年に入学してきた滝夜叉丸は泣いた。翌々年に入学してきた三之助も泣いた。
ここらあたりで七松先輩の可愛がり方は力強すぎることに気づいた俺は、後輩を無邪気な暴力から救うべく立ち上がった。七松先輩が後輩にじゃれてたらそっと監視。後輩が涙目にって来たら「あははは七松先輩ったらあははは」と引き剥がす。
きょとんとしている七松先輩に「ちょっと力強いっすよーもっと優しく!」などとアドバイスを投げかけるだけの簡単なお仕事だ。
その結果、後輩から盛大に懐かれてしまい、七松先輩はちょっぴり落ち込んでいて可哀相な感じになっている。
もともと最初の後輩である俺がもっと嫌がっていればこんなことにはならなかったような気がしないでもない。罪悪感がヤバい。
幸い後輩達も七松先輩のことが嫌いという訳ではないようなので全力でフォローに回る。すると今度は、後輩からは『さりげなく助けてくれる格好いい先輩』、先輩方からは『上をたてて下との仲を取り持つ出来た後輩』などという過大評価を受けてつらい。
違います、俺そういうのじゃないです。やることなすこと良いようにとられて美化されて伝わっていくんだけどどうすればいいの?どんどん俺が聖人化されていく…。
この間なんか七松先輩から、「私は至らない先輩だがこれからもよろしくな!」とか寂しそうに言われたんだけど俺の大事な先輩いじめたの誰?
ことと次第によってはただじゃおかないんだけど名乗り出ろや。


「なまえ、私のこと好きか?」
「もちろんです七松先輩。尊敬してます!」
「そうか。なら、いい。なまえだけは私のこと嫌いにならないよな?私の後輩でいてくれるよな?」
「それはもちろんですが!七松先輩の後輩は俺だけじゃないですよ!滝も三之介もしろも金吾も、みーんな七松先輩のこと大好きですよ!」
「マジか…」
「マジです!」
「そうか…?」
「そうです!」
「そうだな!」
「そうですとも!」


それじゃあみんなでバレーボールしよう!いけいけどんどん!とはしゃぐ七松先輩。よし今日のノルマ達成だ。基本的にポジティブシンキングなお人なので少しの励ましで自己回復してくださる所が七松先輩の長所だと思う。
滝も今年で上級生だ。最近は過剰なスキンシップにも慣れてきて、後輩を気遣う余裕が出てきた。
この調子で先輩が卒業するまできっちりフォローさせて貰おう。
[] | [] | []