夢小説 | ナノ




親のスネかじり02

俺となまえ先輩の出会いは、俺が入学して初めて火薬委員会に参加した時まで遡る。
周りがみんな年上ばかりで同年代の友達がいなかった俺は入学してもなかなか友達を作ることが出来なかった。そんな中、委員会で一緒になったひとつ上の先輩はとっても気さくで無愛想だとよく言われる俺にも優しく接してくれた。
その先輩が「何か悩み事でもあるのか?」と聞いてくれて、びっくりして、嬉しくって、でも迷惑をかけたくなくって、気がついたら首を横に振っていた。
「そうか、何かあったら相談しろよ」と言った先輩は少しだけ、悲しそうな顔をしていた。

先輩に嫌われちゃったのかもしれない。
そう思ったら気分が落ち込む。のろのろと歩いていたら、最近よくちょっかいを掛けてくる先輩方に声をかけられた。
一年生の俺に拒否権も抵抗する力もなく、暗がりへ連れて行かれた。
先輩達の手が、俺の衣を剥いでいくのを見ているだけしか出来なかった俺の目の前に、なまえ先輩が颯爽と現れた。
なまえ先輩は上級生相手にも果敢に立ち向かい、説得を試みたけどだめだった。先輩にまで魔の手が迫ろうとした時、なまえ先輩が大声で助けを呼んでくれた。
そしたらあちこちから飛んできた先輩方に俺となまえ先輩は保護された。
当時十を過ぎた程度の俺やなまえ先輩に手を出そうとした色狂いの六年生は何か罰を受けたらしいが、何も教えてもらえなかった。ただ、あの後一度だけあの六年生と遭遇したことがあったがすぐさま側にいた上級生によって引き離された。
あまりの厳重な対応にびっくりしてしまった俺に、その上級生はなまえ先輩から俺のことを気にかけて欲しいと頼まれたのだと言った。

なまえ先輩、俺のこと心配して…!

どこまでもカッコいいなまえ先輩に俺はもう豆腐を捧げるしか出来ない。
それから俺は先輩の一歩後ろをちょろちょろとついて回っては先輩に迷惑ばかりかけたが、相変わらずなまえ先輩は優しかった。
勘ちゃんと仲良くなり、ハチや雷蔵、三郎と仲良くなった時には「良かったな」と頭を撫でてくれた。先輩は俺の光だ。


「今日、あの日の夢見ちゃった…先輩超かっこよかった…」
「……あの日兵助を助けたのって当時の六年生じゃね?」
「シッ!こら三郎!」
「なんだと三郎それは聞き捨てならない!なまえ先輩が助けを呼んで下さったからこそ六年の先輩方が助けに来てくれたのだ!」
「助けを呼んだっていうか泣き叫んでただけじゃん」
「なまえ先輩の高度なテクが分からないとは愚かめ!なまえ先輩は同時下級生だった…つまり!泣く真似をすることでより迅速に先輩方が集まってくるように仕向けたんだ!そして何より、先輩の危機にあれほどの人間が集まってくるという事実!これはなまえ先輩の人望の厚さを物語っている!!」
「…………へえ…(あれ親のスネかじってるだけじゃね?人望とは違くね?)」
「…………(もうやめろ三郎!これ以上突っつくと長くなるから!頼むから適当に受け流してくれ!)」
「ああ……なまえ先輩……今日委員会来て下さるかな…。最近お忙しいようでお体が心配なのだ…」
「そこまで好きなら何で微妙に距離置いてるんだ?もっと積極的に行ったらいいじゃないか」
「ばっ……!そっ……!き……っ」
「馬鹿言うな、そんなの緊張して出来ないに決まってるだろ三郎もうやめてこの話をこれ以上広げないでって言ってるよ」
「さすが勘ちゃん!前半はあってる!」


いかに自分がなまえを好きか、そしていかになまえが格好いいかを語り始めた兵助を余所に、一向に進展しない親友の恋の行方を考え、三郎と勘右衛門は溜息が止まらなかった。
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