夢小説 | ナノ




近すぎて気付かない

「ハチって良いよなー。明るいし、男らしいし。何より責任感があるし」
「えっ」


俺の部屋に集まり、菓子や茶を持ち寄って行われる恒例の菓子パーティー。
お気に入りのクッションを下敷きにしてうつ伏せに寝転がり、肘をついて菓子を食うという行儀の欠片もない体勢で、突然、何の脈絡もなく思いついたままぽつりと口に出した。
そしたらその場にいた全員が固まった。何故だ。
俺以外の視線は尾浜に。その尾浜の視線はハチに。あ、すごい満面の笑み。ハチすごい汗かいてるけど大丈夫か?


「きゅ、急にどうしたの?」
「ハチみたいな良い奴に飼われたいと思って」
「えぇっ!?」


一番最初に復活したのは不破だった。
慌てて取り繕う感じに笑顔を浮かべて聞いてきたので素直に答えたらハチが絶叫した。
なんだようるさいな。


「なまえ、飼われたいってどういう意味で言ってる?」
「甲斐甲斐しく世話を焼かれたいという意味で」
「だとさ、勘右衛門」


そこで何故尾浜に振る。そして尾浜は何故鉢屋を睨む。
よく分からんが俺の先程の発言で何か勘違いをさせてしまったらしい。面倒なので自主的に訂正はしないけど。


「一度飼ったら最後まで、だろ?いいなあ。俺も死ぬまでハチに世話されて生きたい」
「それじゃあただの介護だろ」
「芸くらいは披露しよう」
「犬か」
「犬になりたい…就活めんどい……」
「究極だなお前は」
「な、なあなまえ?それならハチより勘ちゃんのが良くないか?」
「尾浜?」
「そうだよな!勘右衛門はなまえと同じい組だし、なんたって学級委員長だしな!責任感あるイイ奴だろ!」
「そうそう!ハチより勘ちゃんの方がなまえの面倒見慣れているから適任なのだ」


ねっ、ねっ!としきりに尾浜を勧めてくる久々知とハチ。
尾浜が何か期待した目でこっちを見詰めてくる。


「あー。尾浜はダメだわ」
「なんでっ!?」


何故ハチがここで食いつく。目がマジなんだが。怖いんだが。
久々知がパッチリした目でkwskと無言の圧力をかけてくる。なんぞこれ。イミフ。


「だって尾浜は我らがい組の級長じゃん?い組みんなの級長じゃん?それに先生からも意外と期待されてる尾浜に俺を一生面倒見させる訳にはいかんよ」
「ハチはいいの?」
「いいんじゃない?」
「ひでえ!!」


不破の問いに答えるとハチが騒ぎ出した。ハチは元気だな。
「勘ちゃん大丈夫?」という声がしてお茶を啜りながら尾浜を見ると、何やら顔を赤くして複雑そうな表情をしてらっしゃる。
そして俺に複雑な感情の機微が読み取れる訳がないので久々知に丸投げする。ファイト!
しばらく沈黙が降りたが、最終的には、


「…やっぱり、ハチをシメる。ちょっと来て」
「うえぇぇえ!?ちょ、タンマ!なまえ、助けてくれ!」
「却下。面倒」
「この裏切り者ぉぉおおお!!」


ハチが尾浜に引きずられていくのをバイバイしながら見送ったら罵られてしまった。


「大袈裟な奴。尾浜ちょー優しいから酷いことなんてされないのに」
「ああ…うん……そうだね…」


不破が何か歯切れの悪い返事くれたけど詳しく言わんってことは知らんでいいってことだろう。思考終了。


「あー三年のまごへーでもいいな。ジュンコみたいに尽くされたら幸せだろーな」
「お前それ勘右衛門も前で言うなよ」
「えー?」
「絶対だからね?」
「なんで?」
「そもそもなまえは毒持ってないから伊賀崎には世話してもらえないのだ」
「あーそっかー」


それは残念だ。あーあ、どっかに死ぬまで一生俺のこと愛して世話して尽くしてくれる人いないかなー。



面倒くさがり五年主。
五年生の名前が竹谷だけあだ名なのはその方が短いから。他は苗字のが短い。伊賀崎と孫兵は字数一緒だけど、まごへーって言った方が楽だから名前呼び。
勿論勘ちゃんがちょー優しいのは夢主にだけ。
\竹谷くんアウトー!/
[]