夢小説 | ナノ




予習相手

「好きです付き合ってください!」
「………………」
「ちょっと藤内、ちゃんと返事してよ。予習になんないだろ!」


人が机に向かって明日の授業の予習をしている時に現れたなまえ。
開口一番に言い放ったのが、「俺の告白の予習に付き合ってくれ!」だった。
へえーふーん、なまえ好きな人いたんだ。誰?内緒?…チッ。

大体俺はずっとなまえのことが好きだったのに!
一年のころからずっと片思いして、接点が少ないい組のなまえと距離を縮められるように努力してきたのに!
まさかこんな形で失恋するなんて!!

しかも俺が相手役とかなまえ鬼畜すぎだろ。いやそんな所も格好良いけど。
「藤内はどんな風に告白されたら嬉しい?」とかマジでやめてぇええ…。
左門とでもやってろよ。アイツ良い奴だからとことん付き合ってくれるよ。やっぱだめだ想像したらなんかムカつく。


「好きです、俺と付き合ってください!」
「…俺も、ずっとなまえのことが好きだったよ」


なまえの目を見て、素直な気持ちを伝えると、なまえはニカッと笑って頷いた。


「よし!予習終わり!藤内のおかげでちゃんと告白できそうだ!」
「…それは良かったよ。ほら、もうさっさと本番やってこいよ」
「分かった!」


追い払うように手を振って、見たくないから机に向きなおした。
が、忍たまの友を持った腕を、なまえが掴んだ。そのままぐるっと自分の方に向かせる。


「な、何だよ。早く告白して来いって」
「うん、今からやる」
「だったら俺はもう関係ないだろ」
「藤内がいないと告白する相手いなくなっちゃうじゃん」
「は?」


ぎゅぅうう、と俺の両手を握ったなまえが、満面の笑みで、


「藤内、俺、藤内のことが好きだ!俺と付き合ってくれ!」
「…えっ?あ、あの、なまえ…?」
「返事は!?」
「あっ、はい!」
「そうか!良かった!」


ぴぎゃあああなまえが俺をだだだだきッ、抱きしめて…!?
何これどうなってんの? 誰か教えてくれない??


「ずっと告白するタイミング計ってたんだけど、藤内にぶっつけ本番したら返事貰う前に予習されそうじゃん?俺、藤内が俺以外の奴にこーいうのされるの、嫌だ」
「そ、それであの予習?」
「そう。これからは俺が予習も本番も付き合うから、他の奴とやっちゃダメだかんな!分かった?」
「わ、分かった…」


つまりさっきのはなまえの告白の練習じゃなくて俺が返事する予習だったわけ?
脱力すると同時に暖かい体温に赤面する。何だこれ天国から地獄ならぬ地獄から天国だ。


「なまえ、」


離れがたい温もりだけど、意を決して体を離す。
なまえがきょとんとして俺を見ている。


「ずっと、ずっと好きだった。これから、よろしく」
「ああ、よろしく!」


耳元でなまえが「口吸いの予習する?」って呟いたから、俺は顔を真っ赤にさせる以外の選択肢がなかった。


三年い組快活夢主。左門と並ぶと元気すぎてうるさいと言われる。
藤内が自分のこと好きだっていうのは知っていた。犯人は数馬(ついうっかり)。
当時はその気がなかったので、藤内から言われるまで知らないフリするつもりだった。
でもうっかり両想いになったので告白することに。
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