「はっ、何だよサブウェイマスターってこんな餓鬼だったのか。」

メグリは挑戦者が言った台詞に動きを止める。だが、すぐににこりと笑みを浮かべた。

「本日は、シングル担当であるノボリのかわりに、私メグリがお相手いたします。」
「はぁ?ノボリはどうしたんだよ。」
「ノボリは体調不良です。…私もサブウェイマスターを名乗ることを許可されておりますので、バトルの質は保証いたしますが…どうなさいますか?」
「んなの…。」
「ちなみに私とバトルなさらない場合、あなた様は21両目で負けたということになりますが構いませんね?」

相手の言葉を遮って言うと、メグリはどこか挑発的に微笑んだ。まるで相手がこの挑発にのってこないわけがない、というように。
バトルサブウェイを利用している挑戦者は、基本的に負けることに対し臆病である。逆に勝利することに対しては異常なまでに執着し、貪欲なのだ。

「っふざけんな!いいじゃねぇか!勝負してやるよ!!」

思い通りの展開に内心ほくそ笑みながら、メグリも腰のボールに手を掛けた。

「分かりました。それでは、改めまして…シングルトレイン、出発進行ーッ!!」

掛け声と共に2つのボールが宙を舞った。


‐‐‐‐‐‐


「嘘…だろ…?」

大きな音をたてて倒れた挑戦者のオノノクスを一瞥してからメグリもバイバニラをボールに戻した。それから無線に連絡を入れると、挑戦者のもとへゆっくり足を進める。
カツンと靴の音をさせて挑戦者の前に立つとメグリは張りつけたような笑顔のまま相手を見下ろして口を開いた。

「お疲れ様でした。バトルは終わりました。したがって、ここからは私個人のことですのでどうかサブウェイマスターに偏見を持たれませんようお願いいたします。
……はっきり言わせてもらいますと、見かけで人を判断するような方は自分のレベルの低さを周囲に示しているようなものですよ。あなた様のような方がノボリ兄さんとバトルする資格はありません。100年早いですよ、顔を洗って出直してきてください。まぁ、再びここにたどりつけるとは限りませんけれど。」


‐‐‐‐‐‐‐


「メグリお疲れさまー!」
「はい、お疲れ様です兄さん。」
「今日はすごかったね!」
「…ああ、うん。ちょっとはりきっちゃった、かな。」

曖昧な笑みを浮かべるメグリにクダリは笑みを深めた。そこでメグリは気づく、目の前のクダリの目が全く笑っていないことに。

「まったくもって嫌になっちゃう。メグリの実力も知らないのにバトルの前からなめた態度でさ。」
「…兄さん、キャラが崩れてるよ?」

メグリが苦笑して指摘すると、クダリはぺろりと舌を出した。

「えへへ、やっちゃった。」
「もう…気をつけてくださいね。」
「善処するー!それじゃあこのあともよろしくねメグリ。」

そう言って片目を瞑ってみせたクダリに、メグリは小さく苦笑しながら頷いたのであった。


〜130126








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