例えば付き合ったらなにをするとか、なにがしたいとか、なにをするもんだとか。
付き合い始めてどのくらい経ったら手を繋いでキスをして、更にその先まで進むかだとか。
"そう言う年頃"の間は、男だろうと女だろうと"そう言う話題"に事欠かない。

どこどこのだれそれが付き合ってるらしいとか別れたらしいとか。
隙あらば一緒に居て誰から見てもあの二人は付き合ってる、とか。
まあ全くもって縁のない話だなあ、と思いつつ。

俺はしょっちゅう"そう言う話題"に巻き込まれる。

「月島くんて誰か好きな人とか居るの?」
「うーん、ツッキーそう言う話しないから……多分いないと思うよ」
「どんな子が好きとかも……話、しない?」
「うん、ごめんね」

ありがとう、と小さく笑って教室を出て行った女の子の後ろ姿を見送りながら溜め息。
彼女は廊下で仲の良い子達ときゃっきゃとはしゃいでいる。
結構可愛い子だったなあ、とぼんやり思っていると、またクラスメートから女子が呼んでるぞと声が掛かって、次から次にまたかと流石に少しうんざりしながら顔を上げると。

「山口ー」
「あ、みょうじ」

へらりと笑ったみょうじに下がり掛けたテンションやらモチベーションやらを持ち直して、気持ち駆け足で廊下に出た。

「なに、どうしたの」
「次移動教室だけど、あの先生ギリギリにしか来ないから寄り道。飴食べるー?」
「あー、生物かぁ。なんの飴?」
「そうそう生物。えーと、ぶどうとりんごとみかん」
「じゃあぶどう」
「はい、あげる。山口は次なに?」
「数学。多分今日当てられるんだよね」

たった今貰った飴を、からころと口の中で転がす。
砂糖の甘さが口の中と鼻孔に広がって、とろりと溶けた。

「そういや今日部活ミーティングだけって」
「お? 嶋田さんとこは?」
「行くけど、嶋田さんも仕事あるし。寄り道、して行かない?」
「いいね、行こっか」

また、へらりと笑って、友達に呼ばれて理科室の方に駆けていった。

その後ろ姿を少し、見送って。
それから教室に戻ったら、さっき俺を呼んだ男子がお前も大変だななんて呟いた。

「休み時間ずっと女子と月島の話してんじゃん」
「まあ、慣れてるし……」
「うわあ……」
「それに、それだけでもないし」

3組のみょうじと付き合ってるのかとか言われたことはないし、気まぐれに声を掛け合ったりして話す事は勿論あるけど、お互いに会うことを目的にって事も殆ど無い。ベタベタとくっつき回ることも誰かにのろけてみたりすることも無く、だけどどういう関係かって言われたら付き合ってるよって答える。
一見ドライなように見えるかも知れない。まあ"そう言う年頃"な下心を持ち合わせていないわけでもないし、ちょっとした刺激を全く求めていないわけでもないけど。

「席付けー。宿題の答え合わせするぞー。えーと、今日は山口からな」
「はい」

特別な理由が無くてもただなんとなくでお互い一緒に居れるのは良いことだろう、と。
今はまだ、このくらいで充分だと誰にともなく心の内で呟きながら。口の中でどろどろに溶けた飴を飲み下して、ノートの解答を読み上げた。


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