「わあ、お日様出てる!」

「肌が焼けるぞ」

「なんでそういう野暮なこと言うかな柳は!」

「事実を言ったんだが」


大きな手を引っ張って歩き出す。
引っ張って、とは言ってもすごく背の高い柳が私の力で動く訳がないから、散歩の同意を得たと受け取っておく。


「あ、」

「何だ。車の下に猫でも居たか」

「ううんートカゲ」

「……トカゲか」

「よいしょ」

「やめなさい。捕まえるならもっと愛嬌のある生き物にしろ」


しゃがみ込んで手を伸ばしたら、柳に掴まれた。
そのまま引き上げられるようにして柳の隣に立たされる。


「散歩は生き物採集ではないだろう」

「自由に歩くのが散歩だよー」

「お前は自由奔放過ぎる」


軽く溜め息を吐いた柳は真面目過ぎると思う。
ぶらぶら歩いてるだけなんだから気楽に行こうよ。


「俺がしっかりしていないと何処かに行って帰って来ない気がするから、無理だな」

「失礼な!それにまだ言ってない!」

「このくらい、顔を見れば分かる」


急に私の顔を真剣な瞳で見つめるからびっくりした。
答えに詰まっていると柳がふ、と笑った。


「熱でもあるのか?顔が赤い」

「……焼けたんだよ」

「ほら、言った通りだったろう」


先刻までの名残か、やや強い風が私達の横を吹き抜ける。
空気に流された私の髪をふわりと撫でた柳が「綺麗な空だな」と言った。
ああ、真っ青な空が本当に綺麗。


台風一過と青の僕ら



20091008
晴れた空の下で手を繋ぐ
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