「何をしている?」


聞き慣れた声にふと顔を上げると扉の所に私の幼なじみが立っていた。


「あ、蓮ニだぁ」

「他の掃除当番はどうした」


蓮ニが私の隣までやって来て尋ねる。
大雨で部活が中止だからだろうか、彼の歩調はいつも以上にゆったりとしていた。


「一人がお休みで、一人が先生から呼び出しで、切原くんは英語の補習だったかな?」

「…赤也」


蓮ニが小さく溜め息を吐いた。
少し前、つまりテスト前に蓮ニの家を訪ねたら半泣きの切原くんが居た。
勉強を教わっていたらしいけど、私を見た途端「名字、助けろ!」って叫んでた。
蓮ニ、スパルタだからね。


「何を笑っている?」

「ふふ、切原くんって面白いよね」

「確かに見ていて飽きないが、次に会ったら説教だな」


ふ、と口元を緩ませて蓮ニが笑う。
そういう表情がとても好きだなぁ、と思う。
なんだかんだで後輩が可愛くて仕方ない彼はまるで保護者のようだ。


「名前、」

「ん?」

「俺も手伝う。終わったら一緒に帰るぞ」

「え、いいの?」

「名前一人に任せていると下校時刻を過ぎそうだからな」


大きな手が私の頭をやさしく撫でて、蓮ニは掃除ロッカーを開いた。
はらりと乱れた前髪を眺め、少し気恥ずかしさに浸る。


「ありがとう、蓮ニ」

「今更だろう。ほら、早く終わらせるぞ」

「うん!」


或る放課後の話



20091004
赤也には渡せないな、と
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