▼ 5話
「ベルモット、ボクと賭けしない?」
まだ半分まぶたが閉じたままのベルモットに四つん這いの体制で持ちかける。
幼い笑顔を浮かべながら寝転んだままの彼女に「おねがい」と擦り寄る。
ターゲットたちはこれでイチコロだった。
「…はぁ、なぁに?聴くだけ聴いてあげるわ」
ベルモットは僕の頭を撫でて苦笑する。
やはり彼女には効かなかったようだが話は聞いてくれるらしい。
「バーボンをどっちが先に落とせるか賭けて勝った方がお願いを聞いてもらえる。負けた方は絶対にそれを聞かないといけない。」
秘密主義のバーボンと一度寝たら勝ち。
実に単純なルールだ。
「…いいわよ。でも、ただ寝るだけじゃ面白くないわ。体だけじゃなく、心も落としたら勝ちにしましょう?」
ベルモットの挑戦的な目…
価値を確信している顔だ。
体の関係だけなら僕の方が有利なはず…
だが、心までとなると話は別である。
圧倒的不利だ。
なにせ僕と彼の間には性別の壁がある。
でも、きっとベルモットはその条件を飲まないとこの賭けには乗ってくれないだろう。
「…分かった。心も体も手に入れた方が勝ち。それていいよ」
ぽふ、っとベルモットの胸に顔を埋めながら言う。
ボスに引き取られてきた僕のお世話係はベルモットとキュラソーだった。
まぁ、キュラソーは訓練の時だけだったが…
ベルモットはこの柔らかい胸に僕を抱いてくれた。
僕にとって一番安心する場所だ。
今は自分の計画通りに行かなかったことに拗ねて子供のような行動をとっているのだが…
「そうしてるとただの子供ね」
鼻で笑ったベルモットが頭を撫でてくる。
「…その子供に意地悪な条件を出してきたのはどこのどちら様でしょうね」
「私、勝負は絶対勝たないと気が済まないの」
悪びれる様子もなくたんたんと言い放つ。
(絶対勝ってやるっ)
誰に似たのか、案外負けず嫌いな僕は彼女の言葉でやる気が5倍になった。
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