▼ 1話
呼ばれた部屋に入るとソファーに座るベルモットとジン、それから彼にしなだれ掛かる婀娜っぽい少年がいた。
「あなたがバーボン?」
中性的な子供っぽい声。
事後かと思うほど頬を高揚させ瞳を潤ませた少年。
年の功は14.5歳だろう。
少年に好き勝手させているジンを見てもどう見たって犯罪現場なのだが…
バーボンは場の異常な空気に飲まれながらもとりあえず勧められた席に座った。
肯定の返事をすると少年は嬉しそうに「ふふ」と笑う。
(ジンは男色家だったのか…いや、ショタコンか?)
バーボンからの軽蔑の視線を感じたのかジンは少年をベルモットの方に押しやった。
素直にジンから離れた少年はそのままベルモットの方には行かずバーボンの方にはに近づいてきた。
「初めまして。僕はスティンガーです。」
スティンガー…
確かブランデーとホワイトペパーミントリキュールのカクテルの名だ。
(この子も組織の一員か…)
こんなに幼い子がコードネームを持っていることに驚く。
「29には見えないね」
するりとバーボンの膝の上に座り首に手をまわす。
「えぇ、よく言われます」
腹部を密着させ頬を突っついたり引っ張ったり擦り寄ったりする姿はまるで子供だ。
バーボンの腹に当たっているモノがなければ…
(…どういう状況だ)
頭を抱えたくなる。
そもそもバーボンにそんな気はない。
でもこれはどう考えても誘われているとしか考えられない。
(俺は次の任務の件で呼ばれたはずなだったんだが…)
少なくともこの年幅もいかない少年と戯れに来たわけではない。
完全に対応に困っているバーボンをジンとベルモットがニヤニヤ見ている。
(くそっ、なんなんだ)
「…任務の話を」
やんわりと少年を引き離し話を振る。
少年は少し拗ねた顔をしてからベルモットのソファーの手すりに腰掛けた。
「今回はこの子と私、それからあなた、3人での任務よ」
ベルモットが説明を始める。
「ターゲットはこの子が今日落としてきたあるマフィアの幹部よ。2週間後、東都にあるホテルでこの子が情報を聞き出し殺害した後、私とバーボンでホテルごと爆破。そこがそのマフィアのセーフハウスの一つということはもうわかっているから」
「失礼ですが、こんな子供に幹部の暗殺や情報を聞きださせることなんて…」
「あら、聞いてなかったの?この子が落としたって言ったでしょ。ハニートラップはこの子の十八番。情報を聞き出すくらい造作もないわ。それに子供って言ってもこの子は今年で二十歳よ」
「っ!!」
まさかどう見たって中学生くらいにしか見えない少年が…
ニコニコと嬉しそうに笑う少年はまたバーボンに近づく。
「ヘマなんてしないけどもしもの時は助けてくださいね?」
耳元でそういうとそのまま耳たぶに唇を這わされた。
「スティンガー、帰るわよ」
ベルモットの声におとなしく引き下がったが、その瞳は欲望に燃えていた。
▼ ▲