23話


『お前が取ってくる情報は本当に素晴らしい!』

『…少し、大きくなったかい?』

『また、背が伸びたな。それに顔つきも変わってきた』

低い、お腹に響く声は僕を拾ってくれた人のものだ。

昔は僕が情報をとってくると褒めて御褒美をくれた。

けれど、背が伸び、子供っぽさが消えていくのと比例して部屋に呼ばれることも少なくなっていった。

大きくなっちゃいけない。

子供でいなきゃいけない。

僕は背を伸ばさないようにあまりご飯を食べなくなった。

子供っぽさを残すために仕草も幼くなるように努力した。

それでも顔は変わっていくし、平均より低いとはいえあの人が求めているであろう姿には程遠い。

せめて今の容姿のままで止まっていたい。

そうでなければここから追い出されてしまう。

僕は焦っていた。

今年で20歳だ。

これ以上必要とされなくなるのは嫌だった。

何度も何度もベルモットに歳を取らない方法を聞いた。

あの人は大きくなったと言われてすぐからもう何年も何年も聞き続けている。

それでもベルモットはいつも流して教えてくれない。

だから、かけを持ちかけたのだ。

プラスされた条件は圧倒的に自分を不利にするものだったが受け入れた。

なんとしてもその方法が知りたかったから…

だが、少し仲良くなれたと思ったら思わぬ落とし穴のせいで結局一ヶ月も顔を合わせることが出来なかった。

それに久しぶりに会えたと思えばあの場面でだ。

「…最悪だ」

夢を見ていたはずがいつの間にか自分の思考に変わっていた。

気づきつつもそのまま目を閉じ昨日のことを思い出す。

あの惨状を見て好きになるも何も無いだろう。

夢を見たということは眠りが浅かったということだ。

眠気はあるのに気持ちが昂ったままだったため眠れなかったのだろう。

大きなベッドの上で小さく丸々。

一人分の温もりしかない布団の中で浮かんでくるのはあの人の冷たい目とバーボンの驚いた顔だ。

(…つかれた)

とにかく疲れた。

このまま再び眠りに落ちて二度と起きなくていいと思うくらいには…

それでも今日は報告に行かなければならない。

これも仕事の一つだ。

やらなければいけない。

2度寝したい気持ちを抑え深く息をついてから起き上がる。

目を開けると一瞬風景が霞む。

相当疲れているらしい。

「…おなかすいた」

そういえば昨日はお昼から男と一緒にいたから夜ご飯を食べていない。

冷蔵庫を開け栄養剤ゼリーを口に含む。

それしか入っていないのだ。

報告に行く前にどこかでなにか買おう、そう思い食べ終わったゼリーのゴミをゴミ箱に放り投げる。

(もちろんきちんと命中した)

黒を基調とする服に袖を通し、途中の道で何を買うか思考する。

(そういえば、あそこのハンバーガー新作が出たって言ってたな…)

限定販売ものが好きなわけではないが、興味はあるのだ。

それにあの店はボリュームもある。

成長期の間は体が大きくならないよう食事制限もしていた。

その反動なのか食事は僕の楽しみの一つだ。

朝食が決まり準備が終わる頃には嫌な夢と思考のせいで落ち込んでいた気持ちが少し軽くなっていた。



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