▼ 20話
一ヶ月後にあった少年は血に染まっていた。
転がる屍に全て弾を打ち込んだあとなのか、彼が愛用しているM686が足元に転がっている。
「あら、加勢するまでもなかったじゃない」
隣のブロンドの髪の女が彼の銃を拾いながら言う。
少年は組織に反抗する麻薬密売組織をひとりで制圧したようだ。
「…遅いです。死にかけた」
どうやら彼の体に付いている血はすべて返り血のようで彼自身に大きなケガはないようだ。
「一人で乗り込むからだ」
屍を蹴飛ばした男は鼻で笑う。
「待っていたら逃げられそうでしたし、十数人しかいなかった」
「驕りはいつか身を滅ぼすわよ」
「わかっています」
ベルモットからM686を受け取りスティンガーはこちらを一瞥して一瞬悲しい顔をしたかと思うと次の瞬間には視線をそらし帰るためジンの車に向かっていた。
事の発端はスティンガーが落とした£jとともにその組織の本部に入ったことだった。
本部と言っても小さなもので寂れた倉庫だったのだが…
人数を確認したスティンガーはジンに連絡をし増員を頼んだ。
が、その倉庫はその日に取り払うことになっていたらしく、仕方なくスティンガーが一人で戦闘に持ち込んだのだ。
驚いたことにスティンガーは銃の扱いになれていた。
俺は彼が薬で止めを指したところしか見たことがなかったが、ほかのメンバーは知っていたらしく、血にまみれたスティンガーを見て焦ったのはどうやら自分だけだったらしい。
13人の屈強な男を一人で始末した少年。
正直ハニートラップと暗殺しかできないのだと思っていたから銃撃戦ができることには驚いた。
「銃のスキル高かったんですね」
用無しとなりベルモットを乗せての帰還中隣の女に言う。
「えぇ、対人戦は得意なのよ、組織に来てから叩き込まれているからね」
言っていなかったかしら、と女が笑う。
かなり近距離で撃たなければあんなに返り血を浴びるはずが無い。
かなりのやり手だということがわかる。
一ヶ月前仲良くしていた少年のことをまだ何も知らなかったんだなぁ、と心の中で独り言ちた。
まぁ、自分も彼に秘密にしている事は沢山ある。
彼の場合わざと隠していたわけではなくそういう会話にならなかったから言ってなかっただけなのだろう。
「驚いた?あんなか弱そう少年がって」
「えぇ、まぁ。でも、彼があの方に気に入られている理由はわかった気がします」
ベルモットと共に彼が組織のボスのお気に入りだと知ったの彼と少し距離を置くようになってからだ。
重要な任務には必ず彼が呼ばれているのだ。
(やはり、彼とは仲良くしておくべきだ)
彼を利用しようとしていることに若干の罪悪感を覚えながらも国のためだし、彼も組織の一員だと割り切った。
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