▼ 19話
バーボンが最近距離を取るようになった感じがする。
この前の件もあるし、スキンシップが過剰になっていた気もする。
「相変わらずいい腕だね」
「キャンティ、…お褒めに預かり光栄です」
組織の敷地にあるイマジネーションルーム。
3Dで上映した相手を撃つ訓練のための部屋だ。
お気に入りのM686での自主練は気分がもやもやするときによくするのだ。
「あんたは銃なんて滅多に使わないだろ」
「いざってときに使えないと困りますから。それよりライフルの扱い方教えてくださいよ。スコープを使うと距離感がうまく掴めないんです」
訓練用のライフルを取り出しスコープをつける。
キャンティは何か文句を言っているが気にしない。
「違うよ!そんなに肩に力を入れちゃ外すに決まってんだろ!!」
バンっ、と肩を叩かれる。
「こうだよっ」
ライフルを奪い取りズガンっ、とターゲットの眉間に球を撃ち込んだ。
「おぉ…」
「わかったかい?」
ライフルを返される。
同じように構えターゲットを狙う。
ズガン!
「あ…」
眉間を外れ首に当たった。
でもいつもよりは精度がいい。
「まぁ、素人にしちゃいいんじゃないか?」
キャンティからのお褒めの言葉。
「これ…楽しいですね」
「フン、」
いつものM686は威力も強く携行性もある。
近距離勝負の僕にはお似合いの武器だ。
訓練はいつもゲームみたいなもので命中率が高いと気分がいい。
それに今日みたいにならない武器のコツを掴めるのはワクワクする。
素人のくせにと小突かれるがコツさえ掴んで仕舞えばあとは練習あるのみだ。
「キャンティ、ご教授ありがとうございました!」
営業スマイルで礼を言う。
次は対人訓練だ、と部屋の設定を変える。
少し前までは映像が襲ってくるだけだったのに今では物理攻撃を受ける。
ダメージを与え、与えられるのはストレス発散にちょうどいい。
バーボンのことを考えもやもやした気持ちを吹き飛ばすようにスティンガーは訓練に打ち込んだ。
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