14話


「あちらのお客様からです」

「僕にですか?」

ターゲットから情報を聞き出すためスティンガーと2人でバーに潜入していたのだが、ターゲットはスティンガーではなく自分をお気に召したらしい。

(スクリュードライバー、あなたに心奪われたって…)

完全に誘われている。

本来ハニートラップはスティンガーの仕事だが致し方ない。

「今回は僕がする」

スティンガーに耳打ちしてシェリーを相手に持っていくようバーテンダーに頼む。

(今夜はあなたに全て捧げますって…)

任務とはいえ最悪だ。

自分にそんな趣味はない。

不安気に横目で俺を見ながらスティンガーを飲む同じ名前の少年。

大丈夫だよ、と小さくつぶやいてターゲットの隣の席に移る。

程なくしてターゲットの手が腰にまわり、ホテルに導かれる。

連れてこられたのは事前に調査済みだったターゲットのホテルだ。

俺の体には盗聴器もGPSもついているからスティンガーも今頃バーを出て、車でこちらに向かっているだろう。

彼だって飲酒運転なんて可愛いと思えるほどたくさんの犯罪を犯している組織の一員だし、彼1人で何人の人を闇に葬っているかわかったもんじゃない。

今回は計画通りには行かなかったが、対処できるくらいの実力はある。

早急に事を始めようとする男にシャワーを勧めその間に部屋を探る。

お目当てのデータは案外すぐに見つかり、持参した小型の端末にコピーする。

(あとはターゲットを始末するだけ…)

組織の命でターゲットは殺すことになっている。

裏取引をしている人間とはいえ手にかけるのは戸惑う。

組織の中枢にくい込むためには人殺しだってしなければならなかった。

犠牲の上に平和は成り立つ。

誰かがそう言っていた気がする。

ここまでは驚くほど簡単な任務だった。

だが、順調なのはここまでだった。

「っ!?」

急に体から力が抜けた。

ベッドに手をつき体を支えようとするも上手く力が入らない。

(…薬をもられたのかっ)

おそらくバーで飲んだスクリュードライバーに遅効性の薬が入れられていたのだろう。

(…っ、力がっ、それに、あつい)

弛緩剤と興奮剤の類だろう。

「おや、薬が効いてきたようだね」

バスローブを羽織った男がバスルームから出てくる。

抱き上げられベッドに転がされる。

「っ、」

(まずいっ!)

興奮剤のせいで息が荒くなる。

いうことを聞かない体では抗うことが出来ない。

シャツのボタンを一つずつ外され首筋を舐められる。

「っ…」

薬が入っていることに警戒せず飲んでしまったのは自分だ。

過敏に反応してしまう体にいらだちを覚える。

(スティンガーは毎回これを耐えているのか…)

頭が勝手に現実逃避しているのか、ふとそんなことを思う。

慣れたとはいえ彼は嫌だ≠ニ言っていた。

それでも快楽を覚え込まされた体は反応してしまうのだと。

いつだったかは忘れたが、たしかに彼は言っていた。

男の手が下半身に伸びた時、急にその動きが止まった。

「っ、?」

「バーボン!!大丈夫ですか!?」

天井の換気口から声がする。

スティンガーだ。

おそらく男には毒針でも打ち込んだのだろう。

ガコッという音のあと天井からスティンガーが飛び降りてきた。

「…やっぱり薬が入っていたんですね」

俺の顔を見たスティンガーは何かを注射した。

おそらく動きやすくなる薬だろう。

「データは?」

「見つけた。」

相変わらず息は荒いが立てるようにはなった。

「…少し我慢しててください」

手早く証拠の類を隠滅したスティンガーはまた排気口によじ登り僕を引っ張りあげてくれた。

排気口の鉄格子を元に戻し、俺を支えながら進む。

もうすぐだという声に返事はするものの下半身が苦しくて仕方がない。

それでもなんとか車にはたどり着いた。

後部座席に乗り込むとスティンガーも後ろに来た。

「?」

「…バーボン、少しじっとしていてください」

頭に疑問の浮かんでいる俺を無視し、スティンガーはおもむろにしゃがみ込み俺のファスナーに手をかけた。

「!?スティンガー!!」

何をしようとしているか察し、慌てて引き離そうとするがまだ弛緩剤が残っているようで大した抵抗にならない。

「…一度抜いた方が楽です。目を瞑っていてください」

痛いほど張り詰めたそれを取り出したスティンガーは何の抵抗もなく咥え込んだ。

「っ、す、スティンガーっ、」

暖かくニュルっとした感覚に包まれる。

上下に頭を数回動かされた後、先っぽに吸い付かれあっけなく達してしまった。

「っ、く…」

高まりは治りはしないが少し楽にはなった。

「…このまま僕のセーフハウスに行きます」

俺の息が整う前にスティンガーは運転席に移り何事も無かったかのように車を発進させた。




  
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