▼ 10話
『あなたがいなければっ、』
母さんの声…
『お前はただの道具だ』
冷たい視線はジンのもの。
『邪魔なのよ、こっちに来ないで』
キュラソーの怒った声。
『スティンガー、あなたはもう使い物にならないわ』
醜くなった僕にそう言い放つのはベルモットだ。
(いい子にするからっ…僕をひとりにしないでっ)
「っ、!」
捨てないで
その言葉は音にならなかった。
近くにいる気配はバーボンのものだ。
いつも抱き潰された僕の世話をしてくれるベルモットはいない。
それでも清められている体はきっとこの男がしてくれたのだろう。
何の関係もない組織の一員にそこまでさせてしまったことに罪悪感を覚える。
それにバーボンは何かと僕に優しく接してくれていた。
そんな彼に汚いことをさせてしまった。
謝るも声が上手くでない。
さっき起きた時はきちんと頭が働いていなかったため、バーボンが昨日あの場所にいた理由しか気にならなかった。
迷惑でしかないだろうにバーボンの対応は優しい。
情報のために体を売るなんて軽蔑されることなのにバーボンは任務の成功を褒めてくれた。
いたたまれなくなり部屋から出ていこうとするも体が言うことを聞かずベッドで少し動いただけでそのままバーボンの方に倒れ込んでしまった。
(いたい…でも、帰らなきゃ)
大した抵抗もできず結局ベッドに逆戻りだ。
バーボンの軽蔑していないという言葉がお世辞でも嬉しくて、それどころか勝手に処理してごめんなんて謝ってくる。
首を振ってお礼を言ったあとふと思う。
(…この優しい人を、僕は僕のために落とさないといけないんだ…)
その事実に悲しくなった。
バーボンとは普通に仲良くしていたい。
そう思ってしまったから…
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