8話


「っ…」

全身の軋むような痛みに一気に意識が浮上する。

どこもかしこも痛くて体を動かすことは出来ない。

(昨日、薬盛られて…。ジンのヤツ手加減せずにヤりやがって)

動かせる気配すらない体。

体は清められているようであの特有のベタベタはない。

(…タバコの匂いがない)

確か昨日はジンの部屋でヤったはずだ。

ジンの部屋にしろ、ベルモットの部屋に連れてこられたにしろ、タバコの匂いがするはずだ。

なのにその特有の匂いがない。

「っん…」

重たいまぶたを開ける。

ベッドの横でパソコンを弄っている男は昨日ジンの元まで連れていってくれた男だった。

「バー…ボン」

ほぼ声になっていない空気だけの呟き。

昨日鳴かされ過ぎたせいでひどい有様だ。

「起きたかい?ジンもベルモット別の任務で居なくなったから君を任されたんだ」

とりあえず頷く。

という事はここはバーボンの部屋なのだろう。

喉が痛くてしゃべれないし、少しでも体を動かすと腰に響く。

まだ中に入っているような感覚がある。

「今日はきっと動けないだろうからそこでゆっくりしているといい。水、飲めるかい?」

病室にあるような水飲み用の容器を傾けられる。

介護を受けている気分だ。

しかもそれがヤり過ぎたせいで動けないからなんてひどい理由だ。

この男に好きになってもらわないといけないのにそれどころじゃない。

喉を通る水は冷たく冷えていて傷んだ喉に心地いい。

『ありがとうございます』

口パクで伝えると頭をなでられた。

「お手柄だったらしいね。あの組織のボスを一人で殺ってしまうなんて」

情報が入っている。

僕がボスへ送ったメールはちゃんと届いていたらしい。

あの時頭がふわふわし過ぎて、正直ちゃんと遅れたか不安だったのだ。

褒められたことが嬉しくて声を出さずに笑顔を向ける。

相変わらず腰から下の感覚がほぼないが意識ははっきりしてきた。

(そういえばなぜバーボンはあそこにいたんだ?)

あのターゲットは秘密裏に僕1人だけで追っていたはずだった。

当然誰にも言っていなかったから都合よくあの場所に来れるわけがないのだ。

僕の顔が仕事の時のものに戻ったことに気がついたのかバーボンは昨日あそこにいた理由を教えてくれた。

「君と組むことになってから少し調べたんだ、君のことを。そしたら誰にも何も言わずにいなくなる事があると知って昨日はつけさせてもらったんだ」

任務を共にする相手のことを知っていたいしね、そういった彼はまたパソコンに向き直る。

謎が解け安心したのかまたまぶたが重くなってきた。

(もう少しだけ寝よう。昨日はほんとに頑張ったから…)

次の瞬間すでにスティンガーは夢の中だった。


  
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