友達以上、恋人未満。




毎日お昼は一緒に食べる。
放課後は一緒に帰る。
手を繋いだこともあるし、
キスだってしたことがある。
それが全部恋人同士のすることだってわかってるし、
友達じゃありえないってこともわかってる。

…でも、あれ?
あたしたちって付き合ってたっけ?





「ねえ政宗」
「what?」




放課後、今日もあたしは政宗と一緒に帰っていた。
周りの人はあたしたちが付き合ってるって思ってるけど、
実はそんなことはない。




「あたしたちって付き合ってるの?」
「No」
「ですよねー」




あまりにも即答だったから少しムカついた。
まさに友達以上恋人未満の関係。
本当に友達以上なのか、恋人未満なのかはよくわからないけど…。




「そういえばいつからこうなったんだっけ?」
「こうってどうだ?」
「だから、なんていうか…」
「Ah、この関係のことか?」
「そう、それ!」




あたしがそう言うと、Ha!と鼻で笑われた。




「アンタ、なにも覚えてねえんだな?」
「ん?なにそれ」
「ムカつくから言わねえ」




政宗はそう言うとスタスタと先に行ってしまった。

…そんなこと言われたって、わからないものはわからない。
覚えてないものを急に思い出すこともあまりない。
せめてヒントだけでもくれればいいのに。




「ねえ教えてよー」
「…本当に覚えてねえのか?」
「だからなにを?」
「高1の冬のこと」




高1の冬…といったらたしか政宗と仲良くなった時期だ。
…なにかあったっけ?

思いだそうと、頭をフル回転させる。




「…だめだー覚えてない」
「諦め早えな」
「答えー」
「No.名前が思い出すまでは教えねえ」




そう言う政宗の表情はこの状況をとても楽しんでるようだった。
こっちはなにも楽しくないっての。




「高1の冬…」
「隣の席になった頃だ」
「え、そんな時期あったっけ?」
「Oh…なかなか傷つくぜそれ」
「あ、わかった!弁当一緒に食べ始めたとき?」
「yes」



『friendになってやるよ』



…あー、なんか思い出してきたかも。









『なあ名前、アンタ友達いねえのか?』
『…うるさいな』
『弁当、一緒に食うか?』
『男子の中に混ざるくらいなら一人の方がマシ』
『よし、食うか』
『人の話を聞こうよ』
『屋上行くぞ』
『え?』
『だから、俺一人ならいいんだろ?』
『他の人に見られたら勘違いされちゃうよ』
『いいじゃねえか、させときゃ』
『…なんでそこまでするの?』
『friendだからに決まってんだろ』
『友達?あたしと政宗が?』
『Hum、違うのか?』
『いつから友達だちになったの』
『俺がそう決めたときから』
『うわ、自分勝手』
『アンタにfriendができるまで、俺が一番のfriendになってやるよ』
『あー…遠慮しときます』
『Why!?』









「…ああ」

「Oh、思い出したか?」
「うん…」




一番つらかった時期。
まだ誰とも打ち解けられてなかった頃。
そうだ、政宗が最初の友達になってくれたんだった。
まあ最初は迷惑だと思ってたけど…。




「懐かしいなー」
「あれからほぼ1年だな」
「あれ、でもキス、したとき…」




なんでその流れで付き合わなかったんだろう。
なんでキスしたかも覚えてないけど。
普通キスしたらなんらかの変化が起こるものでしょう?




「それはアンタにまだ友達がいなかったからだろ?」
「どういうこと?」
「だから、俺が名前にkissしたとき、アンタ怒ったんだよ」
「…え」
「"アンタはあたしの友達でしょ"って。"政宗が友達じゃなくなったら友達いなくなる"って」
「えー…」




覚えは全くないし、そのころのあたしは相当馬鹿だったらしい。
たぶん、友達じゃなくなったら政宗と一緒にいれなくなってしまう気がしたんだと思う。
…なんてもったいのないことを。




「kissした瞬間ビンタ繰り出してきたからな、アンタ」
「…ていうか、なんで急にキスしたの」
「名前のことが好きだったからに決まってんだろ?」
「ああ、なるほど。…って、え?」
「Ha!いつも以上に間抜け面だな」
「え?なに、そうだったの?え?え?」
「動揺しすぎだろ」




政宗はそう言って笑うと、あたしの顎に手をかけて上を向かせてきた。
そして驚く暇も与えず唇を重ねた。
まさに早業。
…前もそうだった気がする。




「ッ…ちょっ…え、どういうこと!?」
「今は俺以外にもfriendはいるだろ?」
「え、うん…?」




なにもかもが突然すぎて頭がついてこない。
あたしの答えを聞くと、政宗は口角を上げた。




「ならもうfriendじゃなくても大丈夫だな」
「え?」
「今度こそ、答えてくれよ。
キスの返事は?」

「あ、えっと…」




もうだいぶ前からあたしの中の政宗の存在は"友達"ではなくなっていた気がする。
たぶん、キスされた頃にはすでに好きになっていた。
ただ気づいていなかっただけで。




「もちろん…、イエスで」




友達以上、恋人未満。

(やっと、この中途半端な関係から抜け出せた)



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莉子様リクエストです!

友達以上恋人未満から恋人にするのって結構難しいですよね(^p^)
ていうかキスしたとか政宗さんやりますね(笑)

御拝読感謝&リクエスト感謝!

20120512 どんぐり





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