たった一つの約束もない




「それじゃあね」
「うん、バイバイ」




佐助はそれだけ言うと私の部屋を出ていった。

これが私と佐助の別れのあいさつ。
絶対に"またね"なんて言葉は口にしない。
佐助がそれを嫌うから。


…私が最初に佐助に言われた言葉は、

『俺、約束が大嫌いなんだ』

だった。



そう言って笑う佐助の顔が、なぜか頭から離れなかった。
ただ面倒事が嫌いなだけかもしれないし、忙しいから約束ができないだけかもしれない。
…それでも、その理由を聞くことは一度もできなかった。


いつも不安で仕方ないんだ。
次会えるのかもわからない。
私が佐助のなんなのかも聞けない。
"またね"
という言葉さえも言えない。
私と佐助を繋ぐものはなにもない。
"物"でも、"言葉"でも。
…なんて脆い関係だろう。


それでも側にいたいから。
不安でどうしようもなくてもやっぱりスキだから。


私は、約束のない関係を続ける。




たった一つの約束もない

(いつかまたねと言える日まで)



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結構短いですね。
佐助が約束を嫌う理由は、
…ご想像にお任s((ry

御拝読感謝!
title:確かに恋だった様
20120712 どんぐり





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テーマ「人外ファンタジー」
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