苦手な奴




「あ、政宗先輩」
「!hello、名前!」



ダッ




「…なんで逃げるんですか?」
「なんで追いかけてくるんだよ!?」
「さあ…なんででしょう」




名前はそう言ってへらっと無防備に笑った。
…俺はこのsmileが苦手だ。
というか名前自体なに考えてるわからない。
話してても調子狂わされっぱなしだし、なんでかいつも視界に入ってきて危なっかしい。

とりあえず、苦手なtypeだ。






「政宗先輩、質問です」
「っ…アンタ、足速いな」
「なんで先輩は私を避けるんですか?」
「!そりゃあ…」




"アンタが苦手だから"
…なんて言えるはずない。




「避けて、ねえよ」
「じゃあなんで逃げたんですか」
「だから…まあ反射的に」
「…そんなに私のこと嫌いですか?」
「いや、だからそうじゃ…!?」




顔を上げた瞬間、やっちまったと思った。
そこにはいつものヘラヘラした顔はなく、
眉をこれでもかってくらい垂らして大きな目に涙を溜めている名前がいたから。




「え、what!?why!??」
「…っさむね先輩、私のこと嫌いなんでしょう?」
「いや、ちが…」
「嘘つき…」
「…嘘じゃねえよ」




苦手だけど嫌いではないんだ。
…その苦手ってオーラが存分にでてて、それで勘違いしてんだろうけど。




「じゃあ、なんで避けるんですか」
「…俺もわかんねえ」
「なんで目を合わせてくれないんですか?なんで私には笑ってくれないんですか?なんで…」
「それはアンタが笑うからだろ?」
「?」




俺はため息をついて、それからもう一度息をいっぱい吸った。
とりあえず、本当のこと言って誤解を解こう。
嫌われても…まあしょうがねえ。




「俺が笑うとアンタも笑うから、
…正直、名前の笑った顔は調子狂うから少し苦手なんだ」
「苦手、ですか」
「but、苦手だけど嫌いじゃねえ。勘違いすんなよ?」




言い終わったあと、あれ?と思った。
目を合わせられなくて、なぜか姿を目で追ってしまって、笑顔を見ると調子狂わされて、会うとなぜか逃げたくなる。

これって"苦手"っていうのか?




「なんか…」
「Ah?」




突然考えるように名前が呟いた。
もう目に涙は溜まっていなくて少しホッとする。




「政宗先輩に苦手って言われても嫌じゃないですね」
「!?」




名前はそんなことを言うと、またいつものようにへらっと笑った。

…本当に変な奴だ。


でも、




「名前は泣いた顔よりsmileの方が合ってるな」
「? 先輩、私の笑った顔嫌いなんじゃないんですか?」
「っだから、苦手なだけだ!」




…これが"好き"だということに気づくのは、もう少し先の話。




苦手な奴

(苦手と好きは紙一重)



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苦手と好きは紙一重って、そんなバカな…
と、書き終わったあと思いました。←
でもそこはそういうことにしといてやってください(´-ω-`)
まあ私が勝手に思っただけですが(^p^)

御拝読感謝!
20120701 どんぐり





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