純粋無知




「ねえ佐助、キスってなに?」
「ブッ」




突然名前が身を乗り出してそんなことを聞いてきた。
しかも目を輝かせて。

…さすがの俺様も開いた口が塞がらなかった。





「えーっと、ごめんね。
…今なんていった?」
「だから、キスってなに?」
「あっはー…まじでか」




聞き間違いだということを期待したけど、無駄だったみたい。
…嘘でしょ?




「高校生にもなってキスも知らないって、旦那じゃないんだから…」
「あ、ごめん質問間違えた!
キスってどんな感じなの?」
「どんな言い間違いだよ」
「似たようなもんだよ」
「…ていうか、それをなんで俺様に聞くのさ?」
「だって、
幸村は"破廉恥でござるぁぁあ!"って言ってどっか行っちゃうし、
政宗には"そういうことは猿の得意分野だ"って言われたから佐助に…」
「…竜の旦那ほどじゃないよ」




…別に、もしかして名前は俺のこと…?とか少し期待したわけないよ。
別に悲しくないし。
別に言われたから俺様んとこ来たのかよとか思ってないし。
あれ、前が霞んで見えないな。




「?なんか佐助涙目…」
「汗だよ」
「そうか、夏だもんね」
「で、キスがどんな感じかって?」
「え、あ、うん。
なんか友達が話してていいなーって」
「俺様がしてあげようか?」




完全復活。
冗談で満面の黒い笑顔で意地悪に言ってやると、
名前はそれに負けないくらいの満面の笑顔で言った。




「本当!?」

「…え」
「じゃあ、お願いします」
「いや、じょうだ…」




いやいやいや、そんなバカな。
そこは顔を真っ赤にして困って断るところでしょ?
俺様は名前の困った顔が見たかったのに、立場真逆じゃんか。
まさかの展開だよ。

名前はというとやる気満々で目を瞑って待ってる。
…可愛いのがまた憎たらしいね。




「…本当にしちゃうよ?」




もう知らない。
理性なんて知らない。
どうにでもなれ。




「…」
「…」
「……っ」
「…?」
「…なんて、できるわけないでしょーが!」
「っ痛ったぁ!?」
「キスってのはね、そんなホイホイしていいもんじゃないの!わかる!?」




俺は名前のおでこに頭突きを繰り出して言った。
…なーんて、説教じみたこと言ってみるけど
本当はできなかっただけ。
自分のヘタレさに腹が立つ。
名前の純粋さにも腹が立つ。

…絶対今度はちゃんと付き合ってからリベンジしてやる。

だから、
それまでなにも知らない真っ白なままで待っててね。




純粋無知

(俺のものになるまでは、そのままでいて)



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佐助のキャラ崩れが激しい件。
元は政宗で考えていて、その後佐助にしたので仕方ないかもしれませんが…
変えた理由は秘密です。(嘘です気まぐれです)

御拝読感謝!
20120701 どんぐり





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