嵐の後の贈り物




轟々と風が鳴く。
雨が窓を打ちつける。

"日本上陸した大型台風は…"

テレビではアナウンサーが雨の中中継していた。
あたしはというと…




「政宗えええ!!」
『Shut up!とりあえず落ち着け!』




台風は、怖い。








「わああああ!!」
『What!?なんだ今度は!』
「今屋根が飛んだ!」
『…where?』
「テレビに映ってる家の!」
『それはひどい地域の中継だから大丈夫だ!you see!?毎回bigな声だすな!』
「う…」




台風が怖くて彼氏に電話したのはいいけど、さっきから怒られっぱなし。
仕方ないじゃん、つい声にだしちゃうんだもん…。




「…ごめん」
『Ha…。とりあえず名前は大丈夫なんだな?』
「え、あ、うん。風すごいけど…」
『OK,ならいいんだ』




政宗はそう言うと、はあ、とため息をついた。
なんだかんだ言って心配してくれてるのが伝わってくる。
それにうざがってるけど、絶対に電話を切らないでいてくれる。
あたしの彼氏は、そういう人。




「ホントもうや…わああああ!!?」
『Oh、停電か』
「そっちも!?」
『驚きすぎだろ…』
「あたし暗いのもダメなの…」
『携帯の電気でなんとかなるだろ』
「今電話してるからあんまり意味ない…」
『じゃあ切るか?』
「それだけは勘弁してください」
『必死だな』




電話の奥で政宗の笑い声が聞こえた。
声にださずに喉で笑う政宗の笑い方が好きで、それを聞いただけで少し安心した。
まるで近くにいるような感覚。




『Oh、弱くなってきたみたいだな』
「…へ?あ、本当だ」




いつの間にか電話に意識がいっていて雨の音が聞こえなくなっていたけど、
さっきよりは全然雨の音も風の音も弱くなっていた。




「もう通過したのかな?」
『電気はまだ戻らねえな』




台風というのは通り過ぎると呆気ないもので、それからすぐ、雨も風も止んで静かになった。




「さっきまでが嘘みたい」
『速度早かったみたいだな』
「速度?なんの?」
『台風』
「速度なんてあるの?」
『…sorry、名前はなにも考えんな』
「やっ…、わかるよ速度くらい!」
『無理すんなよ』
「してない!!」
『Ha!…て、Oh…』




突然、政宗の笑い声が止まって静かになった。
台風はもう止んだのに、政宗の声が聞こえなくなっただけで一気に不安が襲ってくる。




「ま、政宗…?」
『Hey名前、ちょっと外見てみろ』
「え、外?まだ雨降ってた?」
『いいから見てみろ』
「?」




よくわからないけど、政宗の言うことに従った。
部屋の窓の雨戸を開ける。

外には…なにもなかった。
もしかしたら政宗が下にいるかも、なんて期待して開けたもんだから少しがっかりした。




「なにもないよ?」
『上だ、上』
「上…?
! う、わあぁ…」




下にはいつも通りの街。
でも上には…満天の星空があった。
雲が飛ばされて顔をだしたらしい。
キラキラといろんな色に光っている。




「え、なんでこんなにいっぱい…」
『電気が消えてよく見えるんだろ』
「すっごく綺麗!」
『これ全部、名前にやるよ』
「ぷっ…
あはは、キザだ!キザ男だ」
『Ha!もう怖くねえか?』
「うん!
ありがとう、政宗」




明日は、きっと晴れるね。




嵐の後の贈り物

(あなたからの贈り物は満天の星空と、あたしへの愛でした)



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最後がよくわからなくなりましたが、
とりあえず政宗が彼女にだいぶメロリンでキザです。
ごめんなさい。
台風のあとって、晴れますよね。
それがすごい好きです。

御拝読感謝!
20120618 どんぐり





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