右目の涙




「―――――二人とも、あとは任せたぜ。
小十郎、最後まで世話かけてsorryな。


…ありが、とう」




政宗様はそう言って、



深い眠りにつかれた。







「…」
「っ…」
「泣くな。政宗様が心配して安らかに逝けねえだろ」
「すみませ…っ」




それでも私の涙は止まらなかった。
それに比べて小十郎様は…
ただ目を瞑り静かに政宗様の死を受け入れていた。




「…行くぞ」
「小十郎さ…」
「野郎共に伝える。その後、村人達にもだ」
「小十郎様!」




たまらなくなって引き止めてしまった。
あまりに小十郎様が普通すぎて。
…そして後悔した。
振り返った小十郎様の顔が、
なにかを耐えるように苦しそうに歪んでいたから。




「小十郎様…」
「…」
「っ…申し訳ありませんでした」
「謝るな」
「ですが…」




私は思ってしまったんだ。
小十郎様は政宗様の死が悲しくないんじゃないかって。
…そんなはずはないのに。
一瞬でも疑ってしまった自分が恥ずかしい。




「…」
「…」
「…政宗様に言われたんだ」
「なにを、ですか?」




沈黙の後、小十郎様は紡ぐように話し始めた。




「"俺が死んでも絶対泣くな"って」
「…」
「きっとそのころにはもうご自分が永くないことがわかっていたのかもしれねえな」
「そうだったんですか…」




政宗様がそう言った理由はなんとなくわかった。
政宗様が亡くなったらすぐ他国にも伝わる。
そうなったら奥州が敵軍に狙い撃ちされるのは目に見えている。
そんなときに小十郎様が政宗様の死を悲しみ士気をとれなかったら…。
たぶん誰も小十郎様の代わりはできない。

最後まで世話をかけて…というのはこれのことだったんだと思った。




「…だが、」
「?」
「最後の"ありがとう"は、結構きたな…」




小十郎様はそう言うと、自嘲気味に笑って手で目を覆った。
…私にとっての"ありがとう"と、小十郎様の"ありがとう"はたぶん違う。
重みが違う。
"今までありがとう"とかそんなんじゃなくて、
もっと二人にしかわからないなにかがあるんだなと思った。




「…雨だ」
「え?」




言われて空を見ると、そこには黒い雲が広がっていて、
まるで政宗様の死を悲しむように、雨が静かに奥州の地に降り注いだ。




「…本当ですね。
冷えますので中に入りましょうか」
「…いや、俺はもう少しここにいる」
「そんな…」




そのとき、上を向いた小十郎様の頬に一筋の雨が伝った。
それはまるで涙のようで…。





「…そうですね、
私ももう少しここにいようと思います」




雨は涙を洗い流すようにしばらく降り続けた。




右目の涙

(今だけは、泣くことをお許しください)



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政宗の死因はご想像にお任せします。
いや、考えてないわけではないんですよ?はい。((嘘ですごめんなさい
あと、最後の言葉は主人公が言ったとは限らないので、
その辺もご想像n((ry
いや、丸投げってわけじゃないんですよ?はい。

御拝読感謝!
20120617 どんぐり





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