愛愛傘

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雨は嫌い。
じめじめするし気分的にも落ちるから。




｢わー…天気予報大はずれ｣



今日もまた、雨が降る。






｢傘置いといてよかったー｣




置き傘というものが初めて役に立った。
まあ好きな人と相合い傘とかできるなら傘なくてもいいんだけど。
なんて…




｢Oh、rainか｣
｢!? ま、政宗くん｣




いつの間にか隣にいた"好きな人"に心臓がはねる。
まさか今考えていた相手がいるとは思っていなかった。

政宗くんはひたすら暗い空を見つめていた。
雨は降り続けている。
突然その視線が私に向いた。




｢名前、傘持ってないなら入るか?｣
｢え、あ…持っ…｣
｢って、置き傘あったのか｣




…｢持ってないよ｣って言う前にばれた。
頑張って隠してたんだけど普通に見つかってしまった。
なんだ、持ってたのか…と政宗くんは少し恥ずかしそうに俯いてもう一度呟くと自分の傘を差して片手をあげた。




｢じゃ、転ばないように帰れよ。good bye｣
｢うん、また明日…｣




私も同じように片手をあげて返す。
あーあ、せっかく相合い傘できるチャンスだったのにな…。
政宗くんを見送りながらもやっぱりそんなことを考えてしまう。

…私もそろそろ帰ろう。

傘を開こうとした瞬間、前の方からバキッというなにかが折れる音が聞こえた。
それと同時に帰ったはずの政宗が走って戻ってきた。




｢っ傘が、折れた。入れてくれ｣
｢え｣




政宗くんの手には折れた普通のビニール傘。
…でもその折れ方は普通じゃなかった。




｢あの、なんか持ち手の部分が折れてるんだけど…｣
｢風が強かったんだ｣
｢え、でも風あんまり吹いてな…
｢風が強かったんだ｣
｢まあ…いいけど｣




傘は根元からポッキリいっていた。
どっかに叩きつけたりしない限り無理な感じに折れている。
どれだけの強風が吹いたんだろう、とか少し怪しみながらも
これで相合い傘ができると思ったらどうでもよくなった。




｢Ah、持つぜ?｣
｢え?｣
｢俺の方が背高いから濡れにくいだろ｣
｢あ、じゃあお願いします｣




そう言って傘を渡しながらも、平静を装うのでいっぱいいっぱいだった。
…この距離、すごい緊張する。

少し歩くと、あたしの肩に一滴も水滴が落ちていないことに気がついた。
その代わりに政宗くんの肩はびしょ濡れだ。




｢ま、政宗くん!真ん中で差してくれればいいよ｣
｢Ah?真ん中じゃねえか｣
｢どこが!?政宗くん濡れてるじゃん｣
｢そう思うんならもっと近づけよ｣
｢え…｣




恥ずかしさで無意識に距離をとってしまっていたようで、
それでもやっぱり恥ずかしくて躊躇していると、政宗くんに肩を抱き寄せられた。




｢早くしろよ。濡れるだろ?｣
｢あ、ごめ…｣




そう言いながらも肩を抱かれている政宗くんの手に意識がいってしまい、
まともに顔が見れなかった。

それに結局抱き寄せた方の手で傘を持っているからあんまりさっきと状況は変わっていない。
距離が近づいただけ。
もう相合い傘できてラッキーとか言ってられる状況じゃなかった。
ドキドキしすぎて心臓が壊れそう…。

…政宗くん、今どんな顔してるかな。
私はきっとゆでだこのように真っ赤だろう。
政宗くんは女慣れしてるっぽいから余裕なんだろうな。
そんなことを考えながら、そっと気づかれないように顔をあげて政宗くんの顔を覗き見た。

…予想は大はずれだった。

顔を隠すように私とは反対の方を向いているから顔は見えないけど、
耳が、少し赤い。
なんだろう、いつもと違う感情。
かっこいいっていうよりかわいいと思ってしまう。
なにより私相手に照れてるっていうことが嬉しかった。



…雨は嫌い。

でも


今だけはやまないで、雨。




愛愛傘

(もう少しだけ、この距離で)



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肩を抱き寄せた、と書いたあと、
あれ、でも傘持ってるよな!?ということに気づきました。
と、いうわけで肩を持っている手で傘も持つという若干無理な感じにしましたが、
この辺はホント多めに見てやってくださいサーセン(^p^)
きっとこのあと主人公が傘持ったんじゃないかな。
それで主人公の肩が濡れて政宗が代わるって言い出せばいいな。
…妄想乙でした。

御拝読感謝!
20120609 どんぐり