苦すぎて甘すぎる




明日はバレンタイン。

今年は本命がいるから気合いを入れて手作りにしよう。

人生初の手作りチョコ。
いや、人生初の料理。




「あれっ、湯煎てどうやるんだっけ!?」

「わー!!塩と砂糖間違えた!」

「焦げたー!!」




…彼氏の命が心配です。









バレンタイン当日。


結局上手くいかないまま、その中でもマシなものを持ってきてしまった。




「なんだ、これ?」
「…チョコです」
「はははっ」
「なにがおかしいの?」
「これがチョコなんて面白い冗談だな」
「…冗談?」
「もう一回聞く。この黒い物体はなんだ?」
「だから…
チョコレートだって言ってんだろうが!」
「この物体Aがチョコレート?
チョコレートに謝れ」
「なにその言い方!?せっかく銀ちゃんのために作ったのに!」
「なにが作っただ!溶かして固めてなんでこうなる!?」




銀ちゃんの手の上にあるのは、綺麗にラッピングされた黒い物体。
…たしかに、これはチョコではない。

お妙さんの料理並に素材が可哀想だ。




「…ひと手間かけて焼いてみました」
「ひと手間かけて見事に素材本来の味を消したなー」
「もういい、やっぱ返して!」
「え、やだよ」
「はぁ!?」
「銀さんは物体Aでもなんでも糖分が欲しいの」




いや、これ糖質0パーセントな気がするんですが。




「これ、甘いとかそういう問題じゃないと思う」
「なんだよ、味見したのか?」
「…臭いを嗅いだうちのわんこが気絶した」
「殺傷能力強っ!なに入ってんだよ!?」
「ほら、だから…」
「苦っ!!」
「うぉい」




黒い物体Aを食べた銀ちゃんの顔がどんどん青くなっていく。
これでもまだ一口かじっただけだ。
我ながらすごいもの作っちゃったな…。




「うぉぉぉ…」
「ほら、だからやめた方がいいって言ったじゃん」
「…じゃあなんで渡したんだよ」
「いや、だって銀ちゃんのために作ったから渡すだけ渡したくて…」
「…ふーん。へー。俺のため、ね」




そう呟いたと思ったら、
ものすごい早さであたしのチョコを全部口に放り込んだ。




「!?ちょっ、なにして…」
「ぅぷ…いや、甘くてうまかった!」
「あれ、今吐きそうな顔してましたよね」




顔色が青を通り越して黒くなってる。
元々死んでる目がさらに死んでる。




「…なんか、ごめん」
「なんだよ、うまいっつっただろ?」
「苦かったでしょ?」
「苦かったけど甘かったな」
「矛盾してるし…」
「名前の愛が甘すぎて銀さん糖尿病なっちゃうわー」
「あ、愛!?」
「良い糖分補給になったよ。ありがとさん」




銀ちゃんはそう言うと、悪戯に笑ってあたしの頭をはたいた。


…苦いけど甘い。
その優しい矛盾が、ただ純粋に嬉しかった。




苦すぎて甘すぎる

(大切な人にはとびきり甘い愛を。)



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バレンタインネタでした!
最後よくわからなくてすみません(^p^)
ただ銀さんは主人公の気持ちが嬉しかったんです。はい。

御拝読感謝!
20120216 どんぐり





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