初恋のように
『万事屋銀ちゃん』
あたしがここに来てから早1年。
ずっと好きだった銀さんと付き合うことになった。
初めての体験だった。
人を好きになるのも、
人に好かれるのも、
思いが通じ合うのも。
でも最近思うんだ。
あの告白はあたしの夢だったんじゃないかって…。
*
「あー名前、そこの雑誌取って」
「………はい」
「おー、早いな」
…ソファで寝転がってあたしが渡した雑誌(ジャンプ)を読んでいるのが、
あたしの彼氏、銀さん。
最近はいつもこんな感じ。
ていうか元々こんな感じ。
付き合う前と全然変わらない。
もう彼氏って言っていいのかも不安になってきたんだけど…。
「あー…銀さん?」
「ん?」
「あの…あたしたちって…「おはようございまーす!!」
意を決して言おうとした瞬間、新八が通勤してきた。
苛つくほどさわやかな笑顔で。
「あ、名前さん早いですね!」
「チッ…ダメガネが…」
「え!?僕なんかしました!??」
「あぁごめん本音が」
「本音!?」
「なにアルか朝っぱらからうるさいメガネネ…」
「神楽ちゃんまでメガネって…」
騒ぎを聞きつけたのか神楽ちゃんも起きてきた。
寝癖ものすごいけど、いつものことだ。
「あ、名前さっきなんか言いかけてなかったか?」
「いや、なんでもない…」
一応新八と神楽ちゃんには付き合ってることは秘密だから、
さっきの質問は2人の前ではできない。
"あたしたちって付き合ってるんだよね?"
聞かなきゃ不安って、変なのかな。
銀さんの態度は付き合う前から変わんないし、
キスとかもされない。
全然恋人同士みたいな会話もしないし、
好きって言われたのも最初の一回だけ。
もしかしてこれが普通なの?
あたしが欲張りなだけ?
「はぁー…」
「なんだよ、言いたいことあんなら言えよ」
「…そんなソファで鼻ほじってる人には言いたくない」
「鼻ほじってんじゃなくてを鼻くそ探索してんだよ」
「一緒だよ」
いつもこうやってどうでもいいこと話してるだけ。
いや、楽しいよ?
楽しいけどさ…。
普通彼女と鼻●その話とかする?
「はぁー…」
「…ったく、さっきからなんなんだよ…」
銀はそういうと新八たちの方へ行ってしまった。
*
…名前のやつ、さっきからため息ばっかつきやがって。
聞いてるこっちが気になるじゃねえか。
なんかあったのか?
「おーい新八、お前名前になんかしたか?」
「え?なにもしてませんよ?」
「さっきダメガネって言われてたろ」
「それは知りませんよ!」
「女の子はデリケートだからねー。
なんか変なこと言うとすぐ平手打ち来るから気をつけろよー」
「だから知りませんて!!」
…じゃあ神楽か?
「私名前になにもしてないネ」
「あー…ほら、酢昆布無理やり食わせたとか」
「名前は酢昆布喜んで食ってたヨ」
「嘘つけ。お前はアイツまですっぱい匂いにするつもりか」
「大丈夫ネ。名前はすっぱい匂い好きだって言ってたから」
「そういう問題じゃねえよ」
神楽も違うとなると残りは…。
「定春お前…「そこは銀さんしかいないでしょう」
「…俺はないだろ」
「なんでそう思うんですか?」
「怒らせるようなことしてないし」
「銀ちゃんは乙女心がわかってないネ」
「女の子はデリケートなんでしょう?」
「だからなんだよ?」
「鈍感な男は嫌われるヨ」
「僕らが知らないとでも思ってるんですか?」
「………。ガキが大人に説教か?」
「銀ちゃんのがよっぽどガキアル」
「好きすぎて手も握れないとか小学生ですか」
「いや、そこまでじゃねえよ」
「じゃあキスもできないネ」
…なんなんだうちのガキどもは。
痛いとこチクチクチクチク…。
「お前らが恋愛語るなんて10年はえーんだよ!」
「逆ギレですか!?」
「そんなんじゃ名前が可哀想ネ」
「余計なお世話だよ、バカヤロー」
…言われなくてもわかってんだよ。
あー、モヤモヤする!!
*
なんかあっちでコソコソ話してるけど、あたしも行っていいのかな…?
「あのー…銀さん?」
「…ん?」
「ほら銀ちゃん名前が来たヨ!」
「チャンスですよチャンス!!」
「お前らうるせぇ!修学旅行か!」
「…なにがチャンス?」
「いや、……あっち戻るか」
「え?あぁ…うん」
あたしは言われるまま、居間へ戻った。
後ろから生暖かい視線を感じるのは…気のせい?
「あの…銀さん?」
「あ?」
「いや、なんでも…」
なにこの状況。
好きな人に話しかけられない的なあれですか?
甘酸っぱい初恋的な。
少女マンガか。
「えっと…銀さん」
「だからなんだよ?」
「いや、なんでも…「言えよ」
「「もっと優しく!!」」
「だからお前らうるせーっつの!!」
後ろからの変な野次も気になるけど、
それよりもそう言った銀さんの目がいつになく真剣だったことの方がびっくりした。
まあ死んだ魚の目なのは変わりないけど。
「あの…えっと」
「…」
「あたしたちって、付き合ってるんだよね…?」
「…は?」
え、は?って言われたよ。
どうしよう、は?って言われちゃったよ。
「はぁー…」
今度はため息はかれましたよ。
え、どういうこと、これ?
「あの、ぎ…「…そんなことかよ」
銀さんはそう呟くと、ソファから立ち上がってあたしの方に寄ってきた。
片手にはジャンプを持って。
そしてドア側をジャンプで隠して…
あたしに唇を重ねた。
「え…」
「付き合ってるに決まってんだろ?」
「あの…えっと…」
「ちゃんと好きだよ、名前」
「う…」
「こーいうのは苦手なんだよなー…」
銀はそう言って頭を掻くとまたなにごともなかったようにソファに戻っていった。
今…キスされたんだ…よね?
好きって、言われたよね?
あたし、銀さんと付き合ってるんだよね?
「…っ銀さん!大好きだよ!!」
「おまっ…あいつらに聞こえんだろ!?」
初恋のように
(あー!ジャンプで見えなかったヨ!!)
(さすが銀さんですね…)
(ガキにはまだはえーんだよ)
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思ったより口調わかった…!(嘘です調子こいてすんません)
でも書いてて楽しかったです。
あ、でも次はダメかも。
漫画借りてからだいぶ経つので。
あー、新作書けるかな…(´・ω・`)
御拝読感謝!
20111108 どんぐり