ごりえちゃんと僕の出会いは保健室だった。いつものように保健委員の活動をしていたら怪我をしたと言ってやってきた。怪我自体も右足の捻挫で他とそんなに変わったところはないいたって普通の患者だった。何がそこまで僕の心を動かしたかって?それは勿論。その健全な肉体だ!!!いや、体目当てなんてそんな簡単でいやらしい理由ではなくて、もっとこう、深い意味がある。
彼女の足に触れた瞬間直ぐにわかった。すべての筋肉が、無駄なく強靭に、かつ繊細に綺麗な形で鍛え上げられていたのだ。小平太のようにしなやかで、文次郎のように固くしまっていて、長次のようにがっしりとしていて、理想的で、見本的で、僕の求める肉体が、今まさに、目の前に存在していたのだ!!!!
そんな理想体が目の前にあったら皆はどうする?そんなの選択肢は一つだけしかないだろう。
抱いた。

僕の全身全霊の愛情と力と情熱で、その体を抱きしめた。そしたらどうだろう。何か波動弾的なもので外まで吹っ飛ばされ、全治三週間の怪我を負ってしまった。
それでも後悔という言葉は全く出てこなかった。不思議と健全な時よりも元気でいられたのだ。布団にいたけれども不運にも一切合わなかった。
彼女は僕の求める理想であり、女神なのだ。そんな運命の出会いをしてしまったからには諦めるなんてことはしたくない。彼女と婚約して、一姫二太郎で、平和な老後を迎えるのだ。もうそういうビジョンも鮮明に見えてしまった。これは完全に結婚するパターンのやつ。
体が完治してからというもの、ウキウキで毎日を過ごしていたのにもかかわらず、それは突然現れた。


・・・・・


今日も今日とてごりえちゃんの食事姿を目に焼き付けようと食堂でご飯を食べていると、雷蔵がやってきた彼女の手をとり「友達からでいいんで僕と仲良くなりませんか!?」と必死に話していた。
雷に打たれたような衝撃だった。
なんで?ごりえちゃんは普通の人では理解ができないほどの可愛さなのに、なんで雷蔵はそんな事を言うのだろう。最初はどうせ五年生の間での暇つぶしかなにかだろうと思っていたのに、なのに…。その後も雷蔵と彼女は徐々に徐々に仲良くなっていき、休みの日には二人で出かけるほどまでになっていた。
僕だってごりえちゃんの護衛を何度もしたことあるし、彼女の好きなもの、こと、起床時間とか、好きな鍛錬とか、苦手なこととか全て知っているはずなのに、それなのに雷蔵の方が仲が良くて充実していそうなんてことを思ってしまうのはなぜなんだろう?
それからというもの、僕の心の中では凄まじいほどの嫉妬、妬みが湧き出てきて、それと同時に彼女が取られてしまうという焦りも出てきた。
そんなときに竹谷に押せ押せモードで行けば彼女もメロメロになると言っていた。なんならすぐにでも婚姻できるだろうとも!(言ってないですけどお!!竹谷)


それからというものくノ一がされたい男性からの行動(僕調べ)を参考に壁ドンとか、顎クイとか頭をポンポンするとかやってみた。
彼女は少し戸惑い気味だったけど「先輩」とよく気にしてくれるようになった。竹谷の言うとおりだった。ごりえちゃんが僕に興味を示してくれている!!なんて嬉しいことだろう。ルンルンな気持ちで次はどんな風に行動を起こそうか考えていた時だった。

訓練場で日中堂々と彼女を押し倒す雷蔵がいた。あの時よりも数倍強い衝撃が襲ってきて、膝からのそばに崩れ落ちてしまった。訳も分からず自分の腹の底から「きゃあああああああああああああ!!」という甲高い声が出てしまった。
その声に反応して二人はこちらを見てびっくりしていた。そして我に返ったのかごりえちゃんの繰り出した波動弾的なもので雷蔵は吹っ飛んでいった。

なんで。なんで二人はあんなことになっていたのだろうか。でも僕だって…いや僕はあんな反応されたことはない。吹き飛ばされたことはあるけど。でも、なんて言えばいいのだろう嬉しそうな、うっとりしているような感じ。僕はされたことがない!!!
これでは雷蔵に負けてしまう。嫌だ!本当に本当にごりえちゃんのことが好きなんだ。寝ても覚めても彼女のことばかり。彼女の存在で一喜一憂させられる生活はとても色鮮やかだったんだ。
このままではダメだと、痛む胸をぐっと握り締め彼女のもとへと駆け出した。


・・・・・・


「ごりえちゃん!」
「あ、ぜ、善法寺先輩」

彼女は自分の表情が見られたくないのか直ぐに背を向けてしまった。声もどこか鼻声できっと泣いていたのだろう。

「…どうしたんですか?」
「君に会いたくて」
「それは、どういう?」
「僕は君のことが好きだ!!」
「!」
「あの日足を捻挫して治療をした日からずっと、君のことがどんどん好きになってそれで」
「あ、あの!」
「僕と夫婦になってくれ!」
「あの!!ごめんなさい」

え?

「え?あの?もう一回お願い……します」
「ごめんなさい」
「もう一回…」
「ごめんなさい、善法寺先輩とはそのような関係にはなりたくありません…」
「な、なんで!理由を!っは、雷蔵かい!?」

何が至らないのか彼女の体を掴み聞き出そうとしたがまた吹き飛ばされた。
意識が朦朧とする中、微かに聞こえた言葉は信じられないことだった。

「善法寺先輩みたいな、ストーカーの方とは…その、無理です」


彼女は泣きながら飛んでいった。


20190601
加筆修正済

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