くのたまと合同実習をすることになった。内容は忍たま、くのたま一人ずつペアになって忍たまは一週間その子を観察する。一週間後くのたま達は街の人たちに変装をして過ごす。そのペアの子を時間以内に見つけるという実習だ。
俺たちは目的のいかに正確に迅速に人物を見つけるための練習。くのたまはいかに人を欺いて情報を持って帰るかの実習。となっている。
先日から勘右衛門と三郎が一人のくのたまによって集中力が低下して、学業に影響を及ぼしていると聞く。次の年からは俺たちも最高学年になるのに、そんなことでどうするんだと心配になる。そして今回の俺とペアになったのがその噂のくのたま通称ゴリラさんだ。この発表を聞いたとき正直馬鹿にしているのか!?と先生方に抗議を申し立てようとしたくらいだ。
こんな事を言うのは相手にとっての侮辱にはなるが、相手はあれだぞ?あんなの直ぐにわかってしまうではないか。男に変装しようとも、あそこまで体格がいい男もそうそういない。化粧でいくら綺麗に着飾ろうともゴリラはゴリラ。どうしたって人間に化けることなんてできないのだ。

一週間観察といったってどうしようもない。癖などを一応覚えてもそれも役にはたたないだろう。ふむふむ、彼女はどうやら自分に自信がないのかうつむきがちだ。それに焦りだすと耳の後ろをさわる癖がある。そんな癖を見抜いても対して苦労はしないんだろうが、実習報告を書くにはとりあえず覚えておかないと。
さあ、残りの時間は愛しの豆腐について研究を進めよう!最近は肉豆腐に最適な豆腐を作るための大豆の品種改良をしている。すぐに育たないから、ある程度たったらほかの研究と平行して進めることになるんだが、とても有意義な時間だということにはかわりない。
先生に抗議とは思ったものの、この時間を作れるわけだから逆に感謝するために豆腐料理でもご馳走してあげた方がよかっただろうか?



…………



「それでは時間は日没まで、課題が出来なかったものは追試とする。始め!」

すでに町に紛れているくのたまを探しに俺達は散開した。ペア以外の者同士なら情報交換や買収はありとされており、そこが低学年の課題との違うところだ。その事もあっていかに同級であろうと嘘の情報をつかまされるのはもちろん、匿ってたりすることもあるのだ。
まぁ、そんなことで不合格になる気は全くないのだが。

さて、町に降り立ちとりあえずは聞き込みや色んなところを見て回ることに。森や廃屋にかくれてもいいとはされているけど、彼女たちも情報収集という課題があるから、基本的には皆町にいる。
一番乗りは俺かな?とにかく体格のいい人を探し町を歩いた。


…………


もうすぐ日没なのに全く見つからないっ!!!どういうことなのだ!?え?がたいのいい人は何人か見かけたがどれもゴリラとは別人だった。勿論話してみたり癖を見て判断した結果だ。
廃屋や森だって規定の場所はほとんど走って見て回ったではいったいどこにいるんだ!?まさか先生方はこの事を知っていて俺とゴリラを組ませたということか。
ゴリラは俺の想像よりも随分諜報活動が得意らしい。

焦りに焦り、町を小走りでもう一回りしようとかけたところ町娘とぶつかってしまった。

「すみません!大丈夫でしたか?」
「あ、はい。申し訳ありません」
「いえ、怪我がなくてよかった。俺は急いでいるのでこれで!」
「あ、ありがとうございまし…」

感謝の言葉も最後まで聞かず、結局ゴリラは見つけられなかった。これが、人生ではじめての追試である。


…………


翌日、食堂でゴリラさんを待っていた。いったい彼女は何処にいたのか。何に化けていたのか。納得がいかなかった。勿論相手の実力をはかり間違えた俺が悪いことなのだが、考えても考えてもあの町でゴリラはいなかったということしか分からないのだ。

暗い顔をして食堂の前につったってる俺は見世物のようでありとあらゆる忍たま、くのたまにぎょっと目を剥かれた。先生方にもあまり思い詰めるなと言われたが、思い詰めない方がおかしい。
暫くして、友人と楽しそうに談笑するゴリラがきた。

「あの、ご、ごりえさん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「え?」
「きゃー、ごりえ!いってきな!席はとっとくから!」
「え?あの…なるべく手短にお願い、します…」
「ああ、そのつもりなのだ」



…………


「この前の実習のことでなんだけど、君はいったいどこにいたんだ?どんな変装をしていたんだ?」
「あ、え」
「正直見つけられる自信しかなかったのに、結局追試になってしまった。恨みとかそんなんじゃないけど、ただ、単純に知りたいんだ!!」
「え、あと…」

もじもじとじれったい態度をとるゴリラに多少イラッとするも、じゃあと岩陰にかくれた。
するとどうだろう。そこにはゴリラではなくて普通の町娘がいた。

「?!」
「あの、日没近くにぶつかったの覚えてます?」
「あっああああああああ!え?!」

開いた口が塞がらない。え?岩のような筋肉と大人の男よりも高い身長はいったいどこにいったというんだ??!それに彼女が言うように、よくよく見れば日没近くにぶつかった町娘ではないか。
ど、どういうことだ!!?三郎でもここまでの変装はできない。まてよ?これが彼女の本当の姿?え?今までのゴリラが本当の姿なのか?!

「これはあの、変装でして、その。私の得意なことってこれくらいしかなくて」
「え、じゃあ、本当の姿は……さっきのほう…?」
「は、はい」

恥ずかしそうに目を伏せ、耳の裏に指をあてがう。間違いない、彼女こそがゴリラででも、ゴリラが真の姿で。

まて。
この事は雷蔵は知っているのだろうか。

「実はあの実習の時、すぐに不破くんにばれて」
「変装した格好で!!?」
「は、はい…」

愛の力ってやつなのだ。

「だから、久々知くんにもすぐばれてしまうと思ってたんですけど…でも、あの、追試の手助けとかいるのであれば協力しますので、がんばってください」
「あ、ああ。ありがとう…」
「あの、それじゃあ食堂に先いってますね」
「…はい」


事実かどうか雷蔵に確認しにいったところ
「あ、うん自分のペアの子を見つける前に先にごりえちゃんを先に見つけちゃって、情報交換とかさせてもらったんだ。へへ」
といっていた。
愛の力ってすごい。そういう力があれば、俺はもっともっと究極の豆腐を作れるのではないだろうか。

20190317
加筆修正済

[ 4/8 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -