沢田綱吉

【お互いの秘密を一つ話さないと出られない部屋】

「「なんで!?」」

また来てしまった。
しかも今度は沢田くんと。

開幕二人してハモってしまうくらいには、この誰得サプライズに微塵も慣れていないのだ。沢田くんに関しては「え、苗字さんもいる!!」って叫んでる。対して私は、沢田くんで良かったと心の底から感謝している。

沢出くんはトラブルメーカーではあるものの、常識人の枠からはみ出していない貴重な人材だ(今のところ)。それに今回のお題は、お互いの秘密を言い合うこと。常識人の彼ならその秘密を他言するなんて事は絶対しないだろう。
これが宗三とか山本武とかだったらどうなると思う。脅しに使われるか、陽の者特有の、それ全然秘密でもなんでもなくないか?という理論から、これ喋っちゃダメなやつだっけ?と自分の何気ない会話の話題として使われてしまうのだ。
想像しただけでも恐ろしい。

さぁ、今回はサクッと暴露してサクッと帰ろうっと。

「沢田くん、実は私は同じようなことを前経験していてね、このお題であるやつをクリアすれば何事もなくすぐ帰れるから、サクッと秘密ばらし合おう!」
「ぽ、ポジティブすぎるよ!だって秘密だよ?人に知られたくないから秘密なんだよ?!」

その言動から察するに沢田くんは大分真面目に秘密というものを考えているらしい。

「沢田くんや、こういう秘密で大丈夫なんだよ。聞きなさいな」

チッチッチ、と人差し指をたて彼の眼前で優雅に振ったあと、ゴホンと咳払いをし「二ヶ月くらい前にお父さんの全然使う気もなく埃を被って存在を忘れ去られていたカタログギフトで、ちょっとお高めのお菓子セットを注文して一人で食べました」と言い切る。

沢田くんのハラハラした視線が注目するなか、部屋の中に“ブー!”という耳障りな音が響いた。

「なんで?!」
「やっぱりだめじゃん!」
「めちゃめちゃ秘密でしたけど?!」
「てゆうかそれ絶対誰かかしらにばれてるやつだよ」
「そんなことあるわけないじゃん!」

若干の口論になりかけていたところに、機械的なアナウンスが響く、

《秘密のレベルが低いため無効です。それとその秘密は他の方も知っているため秘密にはカウントされません》

「ほら!」
「まじかよぉ…、てゆうか秘密のレベルが低いってなんなの!」
「もっといいたくない事いえってことだよね」
「沢田くんごめん、やっぱ出れないかもしれない」

どーしよー!!とお互い頭を抱えてギャーギャー騒ぐ絵面といったらまさに阿鼻叫喚といった言葉がぴったりなんだろう。
より言いたくないことをいえって無理なんだけど?いいたくないんだもん。

先に動いたのは沢田くんだった。

「苗字さん。約束しよう」

正座をして此方を伺う彼にならい、私も同じように正座し体を向ける。

「俺たち秘密をいおう。それで、ここから出ても絶対にお互いの秘密はいわない。俺たち二人だけの秘密にしよう。ここで死んじゃうより、そっちの方が俺はましだから」

腹をくくった沢田くんの目はいつも力強い。
勿論そんな強さにいいえなんていうわけがない。

「私だって死ぬより沢田くんと秘密を共有する方が絶対いい」
「うん。じゃあ、約束ね」

書面での契約なんて道具もなにもないのでできない。そのかわりなのかどうなのかは分からないけど。目の前に小指がそっと差し出されて、私も無言で小指を出す。
固く結ばれた小指が合図だ。

「俺はイタリアのマフィア、ボンゴレファミリーのボスになれって家庭教師をつけられてます。マフィアのボスなんかには勿論なりたくないけど!」
「私は小学校のころ、そこそこ仲の良かった男の子へラブレター渡してと同級生のちょっと嫌いだった女の子から頼まれて、ラブレターの中身をちょっと書き換えて渡してしまいました」


“ピンポーン”
と先ほどとは真逆な軽快な音が部屋になり響く。

「「やったー!」」とお互いにハイタッチをしてドアへとかけていった。が、二人とも考えるのは同じなのか、出口の前に立ち止まり、お互いみつめあう。

「沢田くん」
「苗字さん」
「絶対に」
「秘密だからね」

もはや戦友。厳しい状況下でお互いの身を削り協力しあって現状を打破したのだから。
先ほどのハイタッチとは違い、力強く握手を交わし部屋を後にした。



沢田くんのあのマフィアごっこのやつ、秘密にしてたんだな。
バレバレだったんだけど、なんで不適にならなかったんだろうか。


20240910




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