宗左左文字

宗三
【恋バナしないとでられない部屋】


顎が外れそうだ。

気づいたら何故か真っ白な空間にいて、横には宗三が同じように立っていた。

宗三が立っているから顎が外れそうなんじゃない。
私たちの目の前には扉があって、パッと見そこからしか出入りが出来なさそうだ。
そうじゃない、違うんだ。その扉の上部にデカデカと、“恋バナしないと出られない部屋”と書いてあるのだ。

いいか?私と、宗三で恋バナしないと出られない部屋ってことだぞ?
宗三と??恋バナ?宗三と?宗三とだよ??
地獄かな?

パニックに陥っていてもひしひしと、右横斜め上あたりから突き刺さるような視線を感じている。
知ってたよ。最初からこの視線は感じていたが、見たくないんだよ。
見たら最後、恋バナなんてものではなくて宗三からの愚痴で全て終わるんだよ。この部屋で宗三の愚痴を聞き、ドアも開くこと無く、二人でこの空間で朽ちていくくらいに長い愚痴を聞かされるんだよ。
分かるだろ!?

しかし、宗三は私なんかの矮小な脳味噌の何倍も賢い頭脳を持ち合わせているので、私がわざと目を合わせないとなると強行手段にうつるのだ。
私の柔らかい頬は、奴の骨ばった見た目からは想像できないほどの握力を持つ手につかまれ、無理矢理目を合わせられる。

「いだだだだだだだだだだ!!!」
「…なんですかこれ」

究極に声が低くて明らかに機嫌が悪い。そんなの最初から知っていたけどね!

「わふぁしのせひひゃへーよ!!!!(私のせいじゃねーよ)」
「知ってますよ。貴女みたいな人にこんなこと出来るわけ無いこと」
「ひゃいへふか(さいですか)」
「ではなく、今度は何に巻き込まれてこんなことになっているんです?」
「はひほまへへほへーひょ!!(巻き込まれてもねーよ)」

てゆうかいい加減手を離せ。私の骨格が変わってしまう。押すと鳴く鶏のおもちゃみたいな顔になるぞ。

暫くして、宗三は眉間にシワを寄せたまましぶしぶ手を離した。
宗三覚えてろよ、と恨みがましくやつを睨みながら頬を労っていると、クソでかため息が聞こえる。勿論やつから漏れてるものだ。

恋バナすることは簡単だけど、何でよりによって宗三とやらなきゃいけないんだよ。そこだけ違う人選だったら秒で出れたわ。いや嘘、獄寺さんとかだったら同じく一生出られなかったかもしれない。

「…おい、宗三。不本意だけど、さっさと恋バナしてでよーよ」
「……」
「そーうーざー」
「…貴女、恋なんてしたことあるんですか?」
「……あるし」
「昔良く見ていたアニメの〜とかはなしですよ」
「ッチ!」

何で考えてること分かるんだよ、と舌打ちしたらまたクソでかため息を吐かれた。うるせーわい。

「じゃあ好きなタイプとかでいいじゃん」
「言い出しっぺがいってください」
「は?」
「は?じゃないんですよ、発言には責任をもちなさい」
「いだだだだだだ!!」

今度はアイアンクローかましてきやがった。ひょろがりのくせに、どうやったらこんなゴリラみたいな力出せるんだよ!

「くそっ」

やっとのこと離してもらい、気を取り直して自分の好みのタイプとやらをいってみる。

「えーと、まず金持ちで、顔は真ん中以上はほしい。で、清潔感があって、甘やかしてくれて、家事が好きで、穏やかで……DVじゃない男かな」
「何故、最後のやつは僕を見ながら言ったんです?」
「そんなことないけど」

そんなことある。またアイアンクローかまされても困るから、目線をそらしながら「ほら、宗三の番だよ」と話題を変える。

たっぷり間を置いたあと、宗三はドアの方を見ながらぼそりと一言。

「………主です」


“ガチャ”


「あ?今なんて?」
「開きましたので、お先に失礼します」
「は?!ちょ!」



競歩選手ですとばかりに、秒でその場からいなくなってしまった。

ドアが開いて一件落着。
なのだが、さっきの宗三の発言。一体どういうこと?

「あるじです、って」

主?って固有名詞というか、一人の人物を指してるよね?
てゆうか、主って言い方。

先程も話した通り、私の脳味噌は矮小なのだ。


「あいつ、SMプレイとかしてんの…?」



後にその事をこっそり聞いたらしこたま怒られた。



20240426
ねりけしさんの健全出られない部屋をお題として使用させていただきました。
キャラの選出はアミダくじしました

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