エイリア8

大阪へ移動中、雷門の問題を考える。
風丸、栗松、吹雪などのメンタルやば組。
監督。
皆の怪我。
そもそものエイリア。

うーん、これは酷い。
エイリアに関しては絶賛色んな人たちが動いているので一旦置いとく。置いとくが、後で鬼道辺りとどう思ってるかこっそり考察したい。

皆の怪我に関しては、空き時間に頻繁にチェックしていくしかない。チェックしつつ、練習に口をはさんで、負担をかけないようにする。

メンタルヤバ組だが、吹雪に関しては確実にこのグループに追加しても良いだろう。
あの潜水艦でのパニック障害は完全に精神疾患を持ってると思って良い。本当は今すぐにでもカウンセラーの元へ連れていきたいけどそんなわけにもいかないので、自分の出きる範囲でどうにかしなきゃいけない。
風丸と栗松くんに関してはいつも通り、とにかく一度面と向かって話をしたい。

そして監督問題。
正直これに関しては、監督をチェンジするのが一番手っ取り早いが、理事長からの紹介だし、響さんも認めてるわけだから、今さら新しい監督どうこうは通用しない。
だからって采配を自分なんかが出きるわけないし、というかその考え自体が傲りすぎなのでそもそもない。円堂達選手が自分達で考えて動くにはあまりに荷が重い。
これに関しても現状保留だ。


早速バスでメンタルヤバ組と話をしますかと思ったが、皆試合の疲れで寝ているためそれは叶わず、私も大人しく寝た。
睡眠は大事。ストレスには睡眠も大事。はやる気持ちを押さえて目を閉じた。


…………


大阪につき、理事長の使いであるという秘書の人が待っており、自信ありげにエイリアのエネルギーを察知して場所を探り当てる機械なるものを見せてきた。

皆が見守るなか、スイッチをいれると数秒光ったり音がなったりして、バコッという音ともに壊れた。ごみを持ってくるな。
非常に悲しそうにしていたが、観察眼のある鬼道のお陰で方向だけは掴めたので、そちらへあてもなく歩いていくことに。

たどり着いた先は“大阪浪速ランド”
確かに、大きな敷地内でアトラクションや人でごった返しているこの場所なら、秘密のアジトなんてものがあってもおかしくない、ということになり何故か遊びながら探そーぜ!となってしまった。

しかし私に遊んでいる暇はない。今こそメンタルヤバ組だ!!
さて、誰のところからいこうか。重症っぽいのは吹雪と風丸よな。栗松くんは優先順位は低め。
とりあえず棒倒しで決めるか。と適当な枝を使って円を書き、半分になるよう線を引く。真ん中に枝を置き、指を離した。…吹雪からだな。

手の砂などをほろい、吹雪の姿を探した。
彼はビックリハウスの近くにいて、遠目からみても明らかに生気のない表情をしていた。

「吹雪」
「…あ、苗字さん」
「ちょっと話してもいい?」
「うん」

ビックリハウスの近くにベンチがあったので、そこへ座ろうと促す。

「表情が暗いけど、染岡いなくなったのがキテる?」
「あ、うん…それもあるかな」
「(も、ね。)エイリアとの試合辛い?」
「…そこまでは」
「ごめん暗くなるような話ばっかして」
「ううん。気遣ってくれてるのは伝わるから大丈夫だよ」

とは言うが、表情が先程より暗くなる。

「あのさ、うんと、他意は全くないんだけど、吹雪のこともっと知りたくてさ。色々話したいんだ」
「うん」
「だから、話そう。時間大丈夫?」
「大丈夫。けど、その、なんでそんなに心配してくれるの?」
「なんで?えと、誰かを心配するのに理由っている?嫌いな人とかじゃない限り自然と心配するよ」
「…そ、そういう感じかな」
「そうでしょ。例えばだけど、私が影山のビデオ聞いたとき、具合悪くなってそで掴んじゃったときあるでしょ?」
「う、うん」
「なんで心配してくれたの?」
「それは、あ」
「おんなじでしょ?」
「うん」
「ふ、あんまり落ち込んでると単純なことも難しく考える時あるよね」
「ありがとう」

呆気に取られたようにお礼を言われる。

「?」
「励ましてくれて」
「ん、さっきより全然良い表情じゃない?」
「そう、かな」
「吹雪に限らないけど、皆真面目で優しいから我慢しすぎなんだよ。そもそも宇宙人を倒すために最強チームの選手に選ばれて日本の運命背負って頑張りますって、中学生が背負うべきものじゃないでしょ。嫌ですっていっていいんだよ。それを責める権利なんて誰も持ってないんだから。ましてや自分達が好きでやってるサッカーを手段にしてなんてさ」
「ぷっ」
「笑い事じゃないの。そんなことしてたらストレスなんて秒でたまるんだから。私でよければ何でも聞く。返事はするな一方的に聞いてくれっていうなら聞くだけの人になるし、全肯定マシーンになれっていわれれば、全部肯定する」
「はは、全肯定マシーンって」
「だからさ、自分一人でって考えを一番先にしないでね?」
「本当にいいの?凄く長い時間拘束しちゃうかもよ」
「いいよ。それで皆がいつも通りいられるなら」
「そっか。じゃあ名前ちゃん」
「うん?(名前呼びになった)」
「もうちょっとだけで良いから、話、聞いてくれる?」
「当たり前じゃん」

その後染岡のこと、雷門のことが少しずつ分かってきたこと、本当に自分が雷門のストライカーとしてやっていけるかということ、まだまだ序の口だけど話してくれた。

「雷門のストライカーとしてやっていくなんて重いこと、考えなくて良いよ。私は雷門サッカー部ではないから説得力ないと思うけど」
「えと、重いかな。僕じゃ…出来ないかな」
「激重だし、吹雪が出来ないとかじゃないよ。なんていえば良いかな。野球で例えて申し訳ないんだけど、野球ってバッターが打って点を取るでしょ?」
「うん」
「んで、バッターって自分のチーム全員なれるんだけど、今吹雪がいってる雷門のストライカーって意味合いは“僕がホームラン打って点をとります!”っていっているようなものだとする」
「うん?」
「ホームランはわかるよね」
「うん。観客のとこに球が入ったら一点だよね?」
「まぁ、そんなかんじ。けど、吹雪はバッターなんだよ。んで、雷門の他のメンバーもバッター。
吹雪はホームランなんて打たなくても、ヒットが打てれば良い。他のメンバーもヒットを打って繋いで一点とれれば良い。ごめん、自分でいっといてなんだけど、伝わってる…?」
「う、うん。えっと、僕以外も点をとれる人がいる。えーと、パスとか繋いで僕だけが点をとるんじゃなくて、他のメンバーも点をとっていくって考えたら良いのかな」
「それ!」

解釈が早くて助かる。
完全に府に落ちてるかどうか不明だが、伝わってるのなら今はいい。

…………


さて、そろそろ話しもお開きだ。次は風丸のとこへいくとしよう。
風丸は直ぐ見つかった。自主錬してたからすぐにわかった。

「いた!風丸ー!」
「苗字?」
「ちょっと、話そう」
「……悪い、練習したいから」
「風丸の弱点教える」
「…本当か?」
「うん。だから、話をしよう」
「わかった」

芝生に二人座る。

「で、俺の弱点って」
「まぁまぁ、そう焦んないで。順を追って説明するから。
風丸さ、エイリア学園怖い?」
「…それが説明になるのか?」
「そんなにピリピリしなくて良いよ。この質問の意図なんだけど、風丸の精神状態が試合に影響してるって私は考えてる」
「…」
「続けるよ?エイリア学園を倒すための試合を沢山見てきた訳じゃないけど、影山に拉致される前の鬼道につれてこられた時の紅白戦、世宇子の試合、漫遊時での練習試合、個人練習、イプシロンとの試合と、新帝国との試合。これらで風丸が一番良い動き出来てたの世宇子の時の試合だと思ってる」
「それは俺が強くなってないってことをいいたいのか!?」
「まぁまぁ、ちゃんと話を聞いて。強さと良い動きって私の話では別物だと思って。強さに関してはそれは伸びてるよ。世宇子の時の試合と新帝国での試合なんてレベルが十以上上がってるって思ってもらって良い。けど、動きは良くない」
「なんなんだ、その動きって」
「説明は難しいけど、例えていうなら間接を固定されて、視野も狭くて、反射神経が数段落ちてる、みたいな。そう、本来の力が百パーセントだとして、世宇子以降の試合が半分しか出せていないみたいな」
「なんでそう思うんだ」
「一番そう感じたのはイプシロンとの試合がその他の試合と比べたらよりそういう感じだったから。普段本来の力が半分しか出せてないと感じたら、イプシロンとの試合は三十パーセントしかだせてない。それって、エイリア学園に対して何か感じてるってことになるから」
「一回しかエイリア学園との試合を見てないのにそんな風に感じるのか?」
「はっきりいっとくけど、私はそう思ってる」
「っ!お前はただ見てるだけだろ!それも数回」
「そうだよ」
「そんなのただの感想じゃないか」
「そうだね」
「馬鹿馬鹿しい。円堂や鬼道達はお前の能力をかってるみたいだけど、どうなんだか」
「風丸」
「なんだ」
「もっとそうやって愚痴りなよ」
「…は?」
「嫌なこと沢山あるんでしょ?不満なことも、面白くないことも、全部ここで愚痴って」
「なんでそんなこと」
「凄く大事なことだから。風丸優しいから、なんでもかんでも溜め込むタイプだろうし、ハッキリともいえないから消化不良になってる。そういうの全部悪循環になってる」
「そんなことない」
「なってるよ。第一、風丸さ、私とここで話してるとき一回も目を合わせない。逃げてるよね?」
「逃げてない!」
「今やっと目があった。ほら、しんどそうな顔してるじゃん」
「俺はっ!」
「うん」
「〜っ!!…怖いよ」

やっとのことで絞り出した本音は少しだけ震えていた。

「そうだよね、怖いよね」
「ずっと、怖い!怖くて、たまらない!エイリア学園なんて得たいの知れない奴らはとんでもない強さで、いざジェミニストームを倒したらイプシロンなんてチームが出てくる。イプシロンを倒したら終わるのか?!もっといろんな強いチームがいるんじゃないのか?!いつ、この戦いは終わるんだよ」
「それが普通だよ。風丸の考えてることが普通。怖いって気持ちは大事だよ」
「そんなわけあるか!こんなこと思ってたら戦えない、勝てない!」
「大事だよ、怖いって気持ちは。だって、怖いから力を見極めれる。それによってどうするか自分で選択できる。戦うことも大事だけど、そこから引くことだってまた大事な選択だよ」
「誰も逃げていない。ここで自分だけ逃げたらどう思う?周りからいわれるのもあるが、自分が一番自分を許せなくなる」
「風丸はもし、自分じゃなくてそういう人が出てきたらそう思うの?そいつが許せない?そいつは情けないって思う?」
「……思わない」
「なら大体の人はそう考えるよ。そりゃあ皆が皆同じ事を考える訳じゃないから非難する人もいるだろうし、同じように許す人だっている。だからさ、もし風丸が万が一にそういう選択をして、凄い非難を浴びるとするよ。けど、私だけは絶対に風丸を許すよ。唯一の一人だったとしても許す。約束しても良い」
「…そうか」
「んで?他にも愚痴あるでしょ?」
「…」
「当ててあげる。円堂、たまにウザくなるでしょ」
「ウザくなるまでは」
「でもたまに、ん?って思うでしょ」
「…」
「はい、当たり」
「いいんだよ。他人に対して良い感情しか持てないなんてことは絶対にないんだから。
ちなみに私は度々円堂がウザいなって思う、内緒ね」
「ふ、ああ」
「他は?」
「苗字はどうなんだ。なんだか、俺だけ悪口ばっかいって、その」
「ああ、じゃあ私もいうよ。じゃあ交互にね。えっとね、寝てるとき何人かのイビキがうるさくて毎回キレそう」
「ちょっとわかる」
「絶対ちょっとじゃないだろ、凄く分かるだろ」

なんて、風丸も話してるうちに少しスッキリした顔つきになっていく。定期的に愚痴大会でも、相談でもなんでもしようと約束した。あいつのことだから絶対口約束になると思って、ポッケにいれてあるメモ帳に雑ではあるが誓約書まで書かせた。これでとりあえずOK。

あとは栗松くんだな。さて彼はどこにいるんだと探すと、なにやらゲート付近に人だかりが出来ていて、野次馬根性、そのまま原因を探るとそこには言い争いをする女子数名と栗松くんに円堂達がいた。

「ほんならサッカーできっちり白黒つけたるわ!」
「おう、望むところだ」

と何が起こっているかわからないが、彼女達と試合をすることになったみたいだ。
なんでやねん。



20240121


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