エイリア6

愛媛へ向かっている。
メンタルヤバ組の事を心配している余裕はなくなった。何故なら影山に対する恐怖が〜とかでは一切ない。
ないんだよ。
先程は不意打ちで体調とか崩しちゃったけど、落ち着いて、現状を受け入れてからは正直イライラが止まらない。私はとてつもなく怒っている。

だって考えてもみてくれ。この旅についていくことで、自主練の時間は大幅に削られ、野球部の皆との交流も携帯では出来るが物理的には減り、その携帯で野球に関しての情報収集をこまめにしたいが充電問題があるため思うようにできない。

全部影山のせいだぞ?
影山まじで許さねぇ…。
本来だったら野球してるし(エイリアの件があるから制限はかかってるけど)、親達にもこんな心配かけずにすんだし、雷門サッカー部の問題を少しでも気にする必要もなかったのに。

全部全部影山のせいである。
先程まで「自分、愛媛いかなきゃダメッスか?」
とかひよっていた私だが、今は影山に会ったら何がなんでも一発いれてやるくらいの気持ちでいる。
が、そんな状況の私に火に油を注ぐような情報が入ってくる。

「それにしてもエイリア学園と影山が繋がってたなんて…」
「…あ」

前方に座っている壁山くん達一年の方からその声が聞こえた。

「そういえばそうじゃん!!」

グワシッ!という効果音がつきそうなくらいの力で前座席の頭部を掴み、立ち上がり覗き込む。
前に座っている壁山くん、栗松くん、木暮くんは何やら怯えた表情をしているが知ったこっちゃない。
さっきの状態が心配だと一緒に座ってくれていた木野ちゃんが「苗字さん!?落ち着いて!」と裾を掴んでくる。
そして同じく気を遣って一緒に座ってくれていた吹雪が「ど、どうしたの?!」と声をかけてくる。

「そうだよ、影山逃がしたのエイリア学園じゃん。あいつらのせいじゃん」

そのまま後ろを振り返ると二人はぎょっとするが、思い出したことを整理するため、その場にゆっくり腰を下ろした。
一度深呼吸し、今現在分かっているのはなんだと二人に確認する。

まとめると
・護送車の近くにエイリアの黒いサッカーボールがあった
・エイリアが何らかの目的で影山を利用しようとしてる
・影山もそれを知っていて新帝国学園をつくる


「二人ともありがとう」
「ううん、それより具合悪くなったりしてない?」
「うん。逆にムカついて元気になってきた」
「苗字さんって、強かだね」
「壁山くん達もごめんね」
「だ大丈夫ッス…!」

おもむろにまた立ち上がり、辺りを見回す。円堂と鬼道…は一緒に座ってるな。

「円堂、鬼道」
「ん?」
「なんだ」

二人とも此方に目を向けた瞬間ぎょっとした顔をしたが、怒りが表情に出ていただろうか。

「絶対に影山に勝ってよ。とにかくボコボコにして。その後影山にさりげなく一発いれるから」
「お、おう」
「それをここで発言してしまっては確信犯になるぞ」
「忘れて」
「…」
「とにかく完膚なきまでに勝ちなさいよ」

そこへ染岡が会話に入ってくる。

「まぁまぁ心配すんな苗字」

そのまま染岡へ目を向ける。因みに染岡は通路をはさんだ反対の席にいる。

「今は俺たち最強コンビがいるからな、点バシバシとってやるよ」
「染岡くん…」

何故か私以上に吹雪が感動している。
しかし、染岡がそういう風にいってくれると心強い。流石四番をまかせられそうな男である、包容力が違う。

「染岡、やっぱり野球しない?」
「しねーよ!」
「はは、ジョウダンダヨ。でも期待してるから。向こうが土下座で泣いて許しをこうまで得点し続けてね、吹雪も」
「お、おう」
「はは期待されちゃってるね」


言葉をかわすうちに頭も冷えてきた。逆だろといわれるかもしれないけど、私は至極冷静だ。

さて、影山を手助けしたのがエイリア学園ね。
手段を選ばない影山がエイリア学園と手を結ぶのは、まぁまぁ、そういうことが起きたといわれれば納得はできる。
けど、わざわざ宇宙人が影山なんて一人の人間を利用するのか?影山がどこまで有名人かなんて知らないけど、特定の世界的有名人でもない影山を選ぶ理由。
それに影山に交渉した人は誰?
イプシロンやらジェミニストームやらのサッカーしてる奴らが影山と交渉するなんて想像ができないんだよなぁ。影山も馬鹿ではないから、おもれーチーム(実際にはいってないけど)なんていうやつと交渉したとして、手を結んだか?
影山なら利用して乗っ取るくらいの事できそうな気がしなくもない。
そうなると、その二チーム以外にもエイリア学園のメンバーはいる、ということになってくる。
しかもああいう大人とそれなりの交渉ができる何かが。

予測でしかないから結論なんてものは何時までも出ないけど、これだけは確実だ。
影山もそれを手助けしたエイリア学園も一発いれる。



…………


トイレ休憩でコンビニに立ち寄った。
もう愛媛県内で目的の場所までは近くというところだった。各々体伸ばしたり、軽食を買ったり自由にしていると、目の前を全力疾走していく子供が一人。

愛媛の子供元気だなー。なんて考えていたら二、三人の男が「どこいった?!」「あっちだ!」なんて声を張り上げながら先程の少年が走っていったほうへかけていった。それにしても見事なクローン男達だった。
皆スキンヘッドでサングラスをして、黒いトレンチコートをきていた。ダサさが凄い。あんな会社には将来就職したくないなと平和ボケしたことを考えていたら、「あれ、エイリア学園のやつじゃないか?」と染岡が言う。
え?そうなの?エイリア学園にはサッカーチームと別の奴らがいるとは考えていたけどあんな感じのもいるの?あまりにしたっぱ感が凄くないか?
前世でよく遊んでいた某モンスター育成ゲームに出てくる敵キャラのしたっぱよりダサい。


次第に皆であの子を助けよう!という流れになり追いかけることに。

追い付いた先は大きな橋の下。所謂河川敷。
既に少年は男達に詰め寄られ今にも連れていかれそうな雰囲気だった。
円堂達はそのまま奴らに突っ込んでいき、何故かサッカーで勝負してボロ勝ちして、奴らを追い払っていた。野球で勝負したりしたら同じような感じで去ってくれるのだろうか…。

そんなことはさておき、少年は円堂達に必死にお礼をいって、あるものを渡してきた。多分これのせいで追われていたと。そんなものを私たちに渡すなといいたいところだが、これが何かを調べればエイリア学園の秘密に近づけるとかなんとか。
宇宙人が人間さらってるって、それもう人体実験されてない?

少年のことで影山の事を忘れていたが、瞳子監督に響さんから連絡がきたことで皆本来の目的を思い出す。
どうやら響さんも影山の件で此方にきているようで、埠頭へ落ち合うことになり、少年を家の近くまで送ってから目的の場所へと向かった。


…………


埠頭にいくと、何故か帝国学生と響さんが一緒にいた。なんだその面子と誰しもが思っている。
帝国の生徒に関しては鬼道が一番はじめに反応し、鬼道に加え土門もその生徒達に駆け寄る。
残りは響さんのもとに集い、話を聞く。

帝国の生徒と協力して誘拐された子供達を助けにいくとこだったらしい。
さっきの追われていた少年は響さんが別の場所から逃がした子供の一人だったみたいだ。

「お前、苗字ってやつか?!」

帝国生徒の一人から声をかけられる。誰?
その後を鬼道が続けた。

「苗字、影山の話しは源田と佐久間から聞いたといっていたな?その後は二人と連絡を取ったり会ったりはしたか?」

かなり焦った様子だ。鬼道だけでなくその帝国の生徒も。

「いや、その時意外全く」

そんな時

「やぁやぁやぁ、お揃いなようで」

パチパチとゆったりとした拍手をしながらもう一人、帝国の生徒がやってきた。いや、よくみたら帝国学園の制服じゃない。物凄くよく似ているが細かい部分が違う。
しかし、制服よりも目にいくのはその人物の頭部。モヒカンで、おでこには墨がはいってる。いや、ただのペイントなのだろうか?ペイントであってくれ。

久々にインパクトのある風貌の人物が出てきて正直絶句である。鬼道と初めて会ったときといいレベルだ。
しかし誰だ?皆の表情をみても困惑していて誰かの知り合いというわけでも無さそうだ。

「待ってたぜ、雷門イレブン。新帝国学園は、この先の港にあるぜ」
「お前、誰だ?」

円堂が前に出て恐る恐る聞く。

「俺?俺は新帝国学園のキャプテン、不動明王!あんまりおせぇから、見にきてやったんだよ」
「なっ!」
「新帝国学園のキャプテン?!」

舌とかだして凄いイキり散らかしてるけど本当にキャプテンなんだろうか。というか、こんなのがサッカーとかできるんだ。凄い偏見をもってしまった。
奴は皆が困惑しているとこをみて非常に機嫌を良くし「特別ゲストがいる」「鬼道は喜んでくれる」「苗字チャンも影山がいってた通り自分から飛び込んできた」「あーだこーだ」
とにかく散々しゃべり、煽り倒して、最後にエイリアのしたっぱ達をけしかけて去っていった。

控えめにいって腹が立つ。なんなのあいつ。初対面であんなに言える神経疑うわ。キャプテンということはサッカーするということだな。
円堂達、死ぬ気で勝て。



…………


したっぱ達は帝国の生徒達が引き受けてくれた。響さんもその場に残り、片がついたらそのまま帝国メンバーと子供達を助けにいくといっていた。

私達は新帝国学園とやらを倒すために港へきた。「学校なんてないでやんすけど」
そう。辺りを見渡しても学校なんてものはない。
あのモヒカン騙した?が、直ぐにそれは現れた。

とてつもない大きさの潜水艦が待ってましたと言わんばかりに水上に顔を見せて、その身を割って巨大なグラウンドが顔を見せた。

そして、キィー!!と甲高い機械音が鳴ったあと、影山が声高々に宣言した。「我々はエイリアから力を授かりここに新たな帝国を築いた!」
潜水艦の高いところ、見張り台的なところだろうか?そこからそれはもう嬉々として。

キャラバンからバットと球持ってこればよかった。誰かに球をトスしてもらって、直撃するまでバッティングしたい。


20240121



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