エイリア5

エイリア学園のイプシロン。
レーゼ率いるジェミニストームよりも上のチームで、試合は今回が初めてのため強さや戦略等々不明、らしい。

グラウンドへいくと、漫遊寺中のサッカー部が平和的解決を願ったが案の定武力で脅迫され試合をすることに。私達はその間見学。
因みに最初の情報は音無さんが教えてくれた。とても頼りになる。

さぁ、エイリア学園とやらがどんなものか生で見ますかっと、なんて気楽に考えていた私は馬鹿だ。

「はは、なんだこれ」

感想としては、監禁されて初めて必殺技を見たときのような衝撃。
つっよ…、しかいえないよね。
流石宇宙人、未知数だ。何て言いたいとこだが、先程からずっと続いてるモヤモヤがさらに大きくなる。
宇宙人ってさ、日本語こんなバリバリ使うの?
英語が世界の共通語でしょ?それを言ったらなんで日本なんかに攻めてきたのかも疑問である。
いや、そもそも論として宇宙人なんて存在するかしないか曖昧なものに関して正解はないんだろうけど、何ていえばいいんだ。

彼らは本当に宇宙人なのか?

言語もそうだが、体格。おおよそ骨格が基本的な人間と同じ形。
それにサッカーを戦闘手段にすること。
あと、なんというか、あまりにも言動、思考が人間臭くないか?

更に考えようとしたが、それは漫遊寺中の負傷による敗北のため中断せざるを得なかった。

しかし、ここからがある意味本番。次は雷門がイプシロンに挑む番。
音無さんの懇願によって、この試合に木暮くんも入ることになる。果たして、今の雷門はイプシロンとやらにどれ程通じるのか。
とにかく怪我だけはしないで欲しい。怪我さえしなければこれからもサッカーは何時だってできるんだから。

漫遊寺中の生徒を協力して手当てする中で試合のホイッスルはなった。


…………


試合は前半終了間際、木暮くんが相手からボールを奪った所で、相手のリーダーがなんか高笑いして帰ってった。おもれーチームとかいってた気がする。あいつら本当に宇宙人か???

イプシロンの強さやエイリア学園というものに疑問や驚きはあるものの、試合を見ての雷門も同様、いやそれ以上に気になることや驚くことがある。
素直に円堂達が強くなっていた。世宇子と戦ったのはこの前だというのに、その時より格段にレベルアップしている。

次に風丸や栗松くんのメンタルヤバ組。勿論彼らも強くなってるけど。動きが明らかに練習の時や、世宇子での試合とおかしい。
強くなってフォーム等変わったんじゃない?といわれればそう言う可能性もあるけど、違う。何時ものようなしなやかさとか、関節の動かしかたが全然違う。
医師ではないからこういう言葉は使いたくないけど、イップスみたいな。
もしかしたら心理的なことで体をうまく使えてないのかもしれない。

まだある。次に新しいフォワードの子。ひっそり音無さんに聞いたら、吹雪という名前らしい。
彼も明らかにおかしい。試合の時と、普段の性格?が全然違う。これに関しては、こういう世界だからキャラ付けのためにこういう人間なんです。といことなのかもしれないけど、でも、もしそれがキャラ付けとかそういうことじゃなかったら…?二重人格、医学的に言えば解離制同一性障害とか、そんな病気だったりするかもしれない。
確実に前者であって欲しいが、どうなのかは分からない。

あとは、単純な話だが、怪我だ。
試合が終わって勿論少しではあるが怪我をしたメンバーの手当てをしたりしていたのだが、なおっていない傷もあったりして、もしかしたら旅をしてる中で負った怪我が完治しないで動いている人もいるかもしれない。

正直、今の雷門中は問題だらけでチームや個人個人がいつキャパオーバーしてもおかしくない状態だと思った。



…………


漫遊寺での用も終わったため次の目的地への準備をしている中、木暮くんが仲間になることになった。
別れの挨拶が終わってから新メンバーと私の挨拶を改めてすることになった。
やっと二人の名前をしっかり知れる。

「あたしは財前塔子!ポジションはDF。よろしく!」
「ボクは吹雪士郎。よろしくね、苗字さん」
「んでオレが木暮夕弥。ししっ」
「苗字名前です。野球部です。まぁ、監督が言ってたけど宇宙人退治の手助けということで同行してます」
「「「野球部?」」」

そうなるよね。説明するのも面倒で、あー、といいあぐねてたら円堂が嬉々として説明し初めて、そこに鬼道とか他の面子も便乗し始めたので、任せることにした。

だんだん盛り上がっていく話し声に「準備ができたら早く乗りなさい」という監督の一声で私達はキャラバンへと進んだ。
さて、メンタルヤバ組から少しでも話を聞きたいなと席を見回した。栗松くんは既に一年の壁山くんと木暮くんと席を一緒にしていたので、風丸の方を見るとまだ隣は誰も座っていないようだった。
そこへ足を進めようとしたが「苗字はこっちな〜」と腕を絡めとられ、土門と一之瀬の間へと座らされた。

「…おい」
「なんだよー、席ぐらいで」

じっとり土門の顔をみるが、奴は悪びれもせずニコニコ笑って私の肩を叩く始末。
一之瀬の方をみても「久しぶり!」と笑い返してくる。この帰国子女達ポジティブかよ。そのポジティブを二人に分けてやってくれ頼むから。

バスも発車してしまい、仕方なく椅子により深く腰を下ろした。
近況とか中心に雑談し、さりげなく二人に「しんどくない?」と聞いてみたが「しんどいはしんどいけど、まー、なんとかやってるな」「皆がいるから、大丈夫。それに全国の強豪とサッカーできたりするし、息抜きもそれなりに出来てるよ」と言っていた。
表情も固くないし、自分でストレス解消が出来てるならそこまで問題ないなと一安心。

「苗字は野球の方は?」

一之瀬が少し眉を下げて聞いてくる。確実に気を遣われているやつ。

「言ったか分かんないけど、大会は中止、学校も当面閉鎖、部員も私みたいに大丈夫なやつもいるし、怪我してるのもいるからまぁ、動ける人達は各々で個人練習して、病院組はリハビリとかかな」
「そっか」
「俺達が頑張ってエイリア倒してまた元に戻ったら、どういう形であれ、大会の続きとかして欲しいな」
「…うん」

なんだこの二人。今日凄い優しくない?怖いんだけど。素直に嬉しいのも勿論あるんだけど、なんか、両脇でニコニコされてるからか、こう、圧が。

「照れんなよ〜!」
「そうだよ、照れないでよ!」
「て、照れてないわ!!」
「またまた〜」

何なんだよ帰国子女コンビのこのノリ。木野ちゃん助けて。

「誰か席変わって!!」
「こらこら苗字座りなさい」
「おちついてね」
「うざ」

そんな謎のテンションで絡まれるので、高速へ乗る前のパーキングで休憩が入ったことに凄く感謝した。
流石にあの二人と一瞬でも離れたかったのでマネジャー達と一緒に外の自販機へ。お水美味しい。
やっぱり長時間座りっぱなしというのは疲れる。謎絡みもされるし。

次こそはメンタルヤバ組と話せるといいな、というか絶対話すと心に決め、さぁそろそろ出発だしキャラバン戻るかと皆で乗り込むと、何やら監督が険しい顔で考え事をしていた。運転手の古株さんも心配そうに見つめている。
何かあったんだろうか?と監督の方を見ていたらバチリと目が合う。が、気まずそうに目をそらされ、皆に向かって声をかける、

「次の戦うべき相手が決まりました」

誰だ?もうイプシロンから襲撃予告がきたのか?などなど、ざわつく。が、その相手を告げるわけではなく、雷門理事長の元に届いた映像をここのパソコンにうつすので見てくださいといい、皆がその画面に注目した。
しかし私は最前線にはいけなかったので、モニターは見えなくて声だけを聞くことになる。

「久しぶりだな。イナズマイレブンの諸君」

その声はモニターを見なくてもハッキリと誰だか分かるものだった。

「影山?!」

各々驚きを見せている。私は確実な情報ではなかったが、知っていた。知っていたけれど、いざこうして声を聞くと体が強ばってくる。それに吐き気もしてくる。
ちょっと、一人で立ってるのも辛いかもしれない。
近くにいた誰かの服の裾を掴み、しゃがみこむ。

「え、あ、大丈夫?!」
「苗字さん!?」

まだ影山の話しは続いている。どうやらとっさに掴んだ裾は吹雪のものだったようで、彼もしゃがみこみ、そこに駆け寄ってきた木野ちゃんも加わり、二人に抱えられながらバスの座席に腰を下ろした。

お陰で何をいってるか最後まで聞こえなかったが、木野ちゃんが簡単に説明してくれる。

「エイリア学園の手を借りて逃げたみたいで、新帝国学園をつくって四国で待つって…。鬼道くんと…苗字さんのことも、名指ししてた」
「…やっぱりか」
「え?」

皆が動揺して、エイリア学園との繋がりや、新帝国学園とはなんだとか、鬼道の事とかとにかく混乱状態。それに関しては私もだけど。影山に対して想像以上のトラウマを持ってたみたいだ。声を聞いただけでこれって。我ながら鼻で笑いたくなる。

そんな中、影山のことを知っているのは雷門メンバーだけなので、吹雪や財前から至極当然の疑問を投げかけられる。

「ボク、よく知らないんだけど、影山って中学サッカー協会の副会長だったんだよね?」
「それがなんで倒さなきゃいけないんだ?」

円堂達は今までのことを説明する。悪行の数々と神のアクアのことも。

影山を許さない。奴の待つ愛媛へ早速行こう!と一致団結しているが、ここで瞳子監督から私に声がかかる。

「苗字さん。本当のこと、話していいわね?」
「はい」

と聞こえているか、不安だったため手も一緒に上げる。

「彼女がこの旅に同行した理由ですが、本当は影山の件が関係していたからです」

またもざわつく。
監督はそんな事気にせずに話を続ける。

私が帝国学園の源田と佐久間から、影山と新帝国学園のことを聞かされたこと。その後自分の身を案じて鬼瓦さんに相談し、警察や日本の現状を鑑みてこの旅に同行するのが最善だと判断し、行動にうつしたこと。

「佐久間と源田がそんなことを…」

同情の目が此方に向けられるのが分かるが、こんな事態になったのだから私には確認しなきゃいけないことがある。

「あの、私って愛媛に着いていかなきゃダメ…?」

この旅に同行したのは今監督がいった通りだが、影山が愛媛にいると分かって、そこへ自分から突っ込んでいくのははたして正解なのか?

その問いに誰も答えない。
分かっていたことだ。これに関しては自分で決めなきゃいけないこと。口を開こうとしたとき、円堂の声が響いた。

「苗字はどこも安全じゃないから俺達と旅をすることにしたんだろ?なら一緒に行こうぜ!影山なんかに俺達は負けないし、勝てばもう逃げなくたっていいんだしさ!」

やっぱり円堂は円堂だなぁと。学のない感想になってしまうけど、その言葉に勇気付けられたのは紛れもない事実だった。



20240116

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